■パワハラ横行や呪われた仲間との戦闘…『ドラクエVIII 呪われし姫君』の「リブルアーチ」

 『ドラゴンクエストVIII 空と海と大地と呪われし姫君』では、リブルアーチの町でなかなかヘビーな展開が待ち受けている。まずは大呪術師と自称するハワードによるパワハラだ。

 ぼってりと太った中年男性のハワードは、暗黒神ラプソーンを封じ込めた七賢者の末裔をうたっている。しかし、その先祖代々譲り受けた魔力とは、実は七賢者のひとり・クーパスからハワードの先祖に譲られたものであり、七賢者の末裔ではない。

 本当のクーパスの末裔は、ハワードの元で働くチェルスという若い男だった。先祖間では逆転の関係だが、ハワードとチェルスもそんなことを知らない。ハワードはチェルスに暴言を吐き、愛犬レオパルドに「様」付けを強要、エサを四つん這いにさせて毒見させるというひどいパワハラぶりだった。

 もちろん見ていて気持ちのいいものではなく、さらに、それを黙って受け入れてしまうほどにハワードに忠誠を誓っているチェルスには同情してしまう。

 暗黒神ラプソーンは死してなお、自身の魂が封印された杖を握った者を操り、七賢者の末裔を殺そうとしていた。これにより、主人公の仲間であるゼシカが操られ、敵として登場する。

 この「呪われしゼシカ」は仲間のときよりもパワーアップしているが、超難敵のドルマゲスを倒したあとなので、3人パーティでもそこまで苦戦はしない。だが、いくら操られているとはいえ、相手は仲間で、しかも女性だ。ヤンガスの「かぶとわり」で攻撃するのはちょっと気が引けてしまった。

 そうして呪われしゼシカを倒すと、今度はレオパルドが杖に触れて操られ、チェルスに致命傷を負わせてしまう。世話をしていた主人の愛犬に襲われるのも十分に悲劇だが、そこでチェルスは“レオパルドがいなくなったらハワードが悲しむから追いかけてほしい”と、主人公に託すのだ。

 あんなにひどい仕打ちを受けていたのに、死の間際までハワードを心配するなんてあまりにも切ない。

 その後、事実を知ったハワードは自分のおこないを悔やむのだが、チェルスはもちろん帰ってこない。なんともやりきれないエピソードだった。

 

 こうして振り返ってみると、『ドラクエ』シリーズには後味の悪い展開が多かった。イベントなので傍観するしかないのだが、モンスターよりも人間のほうがひどい所業をおこなっていることも多く、本当に考えさせられるエピソードがたくさんある。

 しかしこのようなエピソードがあるからこそ、作品が印象深くなっているのも事実だ。ほかにもあるので、また機会があれば紹介していきたい。

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