
2024年11月に発売された、HD-2D版『ドラゴンクエストIII そして伝説へ…』(スクウェア・エニックス)。往年のファンのなかには、懐かしみながら新たな冒険を楽しんだ人も多いだろう。
さて、そんな『ドラクエ』シリーズでは、思わず考えさせられてしまう重厚なエピソードがたびたび登場する。たとえば『ドラゴンクエストVII エデンの戦士たち』での、レブレサックの神父にまつわるエピソード。魔物の身代わりとなって村を助けた神父だったが、その後、村人が彼を迫害してしまうというなんともやるせないイベントだった。
ほかにもある『ドラクエ』シリーズでの「後味が悪すぎるエピソード」を、振り返ってみたい。
※本記事には各作品の内容を含みます
■卑しい人間たちに殺されてしまった『ドラクエIV』の「ロザリー」
まずは『ドラゴンクエストIV 導かれし者たち』の第5章に登場する、エルフの女性・ロザリーの悲しきエピソードを紹介しよう。
流した涙がルビーになる特異体質のロザリー。人間に捕まっていたところを本作のラスボス・デスピサロに助けられる。2人は相思相愛の仲となり、ロザリーはホビット族が住むロザリーヒルにかくまわれていた。
ちなみにこの時期、デスピサロはロザリーヒルで青年・ピサロとして周囲から慕われており、デスピサロと名乗るのは「進化の秘宝」を使ってからである。
そんな心優しきロザリーは、卑しい人間たちによって再度さらわれてしまう。主人公たちはイムルの村にある宿屋に泊まると、その顛末を夢で知ることができる。
夢では、3人の人間がロザリーを痛めつけてルビーの涙を手に入れようとしていた。駆け付けたデスピサロによって3人は瞬殺されるのだが、ロザリーは受けたダメージにより「ぐふっ……!」と唸って死んでしまうのだ。この時、デスピサロの心境が真っ赤なグラフィックで表現されており、非常に怖い。
これに憤ったデスピサロは人間を根絶やしにしようと、自らに「進化の秘宝」を使って暴走してしまう。人間を敵視しているとはいえ、リメイク版でも好青年の姿だったはずが、ラスボスとして立ちはだかるときには異形のモンスターとして登場するのが切ない。それだけピサロにとってロザリーは大きな存在だったのだろう。
このロザリーの誘拐はデスピサロの部下・エビルプリーストの陰謀によるものなのだが、巻き添えを食ったロザリーはさすがにかわいそうだ。人間にさらわれたのは、護衛のピサロナイトを倒した主人公側に要因があるのかもしれないと思えてしまい、なんとも後味が悪かった。
■村人から冷たく突き放されてしまった『ドラクエV』の「カボチ村」
次は『ドラゴンクエストV 天空の花嫁』での、カボチ村のエピソードだ。
港町のポートセルミではカボチ村の農民の代表が、畑を荒らす化け物退治を頼むべく強い戦士を探していた。この依頼を引き受けると、報酬3000ゴールドのうち前金として半分をもらえる。カボチ村へ行くと村長たちからも期待されるため、意気揚々と村の西にある「魔物のすみか」へと向かったものだった。
しかしその化け物とは、なんと少年時代に仲間だったベビーパンサーが成長したキラーパンサーだった。戦闘中にビアンカのリボンを使うと記憶が蘇って主人公に懐き、仲間になってくれる。
つまり村を襲っていたのはかつての仲間だったというわけで、化け物退治は完了したようなもの。ところが、カボチ村へ帰ると、主人公はキラーパンサーとグルでお金をせしめようとした悪人だと疑われてしまうのだ。
村長からは報酬として残り1500ゴールドをもらえるものの、とっとと村から出ていけと突き放されてしまい、まるで主人公が悪者のように見えてしまう。ここではさんざん言われるので報酬を断ってもいいのだが、キラーパンサーの装備品が必要なので、ゲーム的にはもらっておきたいところ。
それにしても普段からモンスターを連れているのだから、少しは大目に見てくれてもいいと思うのだが……。化け物に怯えていた村人からすると、見事なまでに手懐けている主人公は怖い存在に思えたのかもしれない。報酬を満額受け取っているだけに、なんとも後味が悪かったものだ。