■初の主人公としてキャラと人気を確固たるものにした『0』

 2015年に発売された『龍が如く0 誓いの場所』は、シリーズ最高傑作の呼び声も高い。その理由のひとつに、本作で初の主人公に抜擢された真島のストーリーの完成度が挙げられるだろう。『1』本編から17年前、真島が24歳だった頃の物語は、彼のキャラクターを決定づけるものだった。

 日本のバブル時代を舞台にした『0』において、若かりし頃の真島は、ある失態を理由に裏社会を追われ、キャバレーの雇われ支配人として鬱屈とした日々を過ごす。客に頭を下げたり、オーナーの「佐川組」組長・佐川司の理不尽に逆らえなかったり……『4』『5』で掘り下げられた繊細な本性が前面に出されていた。

 そんな真島は、大組織「東城会」全体を揺るがす事件を通して変わっていく。最初は殺しのターゲットでしかなかった女性・マキムラマコトとの悲恋や、「鬼仁会」会長・西谷誉との出会いを経て「享楽的な生き方」に目覚める。“嶋野の狂犬”と呼ばれる破天荒な性格は、この頃に培われたものだった。

 本来は繊細で思い悩むことも多い性格なのに、カッコいい生き方を貫こうと破天荒な男を目指し続ける「真島吾朗」という男を徹底的に深掘りし、現在に繋がるイメージを確立させたのが『0』という作品だと言えるだろう。

 真島の『1』『2『3』でのぶっとんだキャラクター性に対し、『4』『5』のシリアスな一面はあまりにもギャップが大きく、違和感を覚えるファンも少なからずいた。当時の筆者もそのひとりだったのだが、『0』はそれを見事に解決してくれた。シリーズ最高傑作との評価も頷けるゲームだ。

 

 真島は2016年発売の『龍が如く6 命の詩。』から出番が減少していった。『龍が如く7 光と闇の行方』で主人公が桐生から春日一番へ世代交代したこともあり、真島は表舞台から姿を消しつつある。『龍が如く8』では事業の失敗をきっかけに田舎に隠居する展開があったぐらいだ。

 だが『7』で終盤に登場して春日と共闘したり、隠居した『8』でもクライマックスで桐生のもとに駆けつけたりと、おいしいところは逃さない活躍を見せている。

 『8外伝』ではついに還暦を迎えた「真島の兄さん」だが、まだまだ元気な姿を見せてほしいものだ。

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