
裏社会を生きる男たちの生きざまを描いた『龍が如く』(セガ)シリーズ最新作『龍が如く8外伝 Pirates in Hawaii』が好調だ。本作はシリーズ屈指の人気キャラ・真島吾朗を主役に、記憶を失った彼がハワイで海賊となり、大海原を暴れまわるストーリーである。
かなり奇天烈な設定の『龍が如く8外伝』がファンから受け入れられたのは、真島という人物のひと言では語りつくせないキャラクター性の賜物であろう。以前は敵味方関係なく傷つける武闘派だった真島だが、シリーズを経るにつれてそれだけでは片づけられない非常に味のある男へと育っていった。
そこで今回は、主人公の桐生一馬やファンから「真島の兄さん」と慕われる真島が最初はどんな男で、どのように変遷していったかを振り返ってみよう。
※本記事には各作品の内容を含みます
■怖かったけど愛嬌があったのは最初から…『1』『2』『3』時代
真島はシリーズ第1作『龍が如く』から登場し、当時は「嶋野組」若頭“嶋野の狂犬”と恐れられる男だった。100億円を巡る陰謀渦巻く本作において、真島はただ桐生との対決に執着し続ける恐ろしい男として描かれており、そのために誘拐や破壊行為もためらわない凶行をくり返した。
一方、今のキャラに繋がる片鱗は、この『1』の頃からあったりもする。第11章において、真島が事件に巻き込まれた女性を人質にとったシーンでのことだ。怯える女性に真島が「どや? 俺の女にならんか?」と迫るが、女性は震えながら「嫌です……私 他に好きな人が……」と拒絶。
桐生を含め、誰もが激昂する真島を想像した次の瞬間、本人はこう呟く。「そうか……正直な子や……」と。
何の琴線に触れたのか「ええ! それでええ!」と、しきりに感心する真島。ついには女性を「ほれ ココ危ないで! 早よ 行き」と、逃がすのだ。自分で捕まえたのに……。
続く『龍が如く2』では、爆弾解除の際に「どちらにしようかな」で切るコードを決める、『龍が如く3』では国会議事堂にトラックで乗り込むなど、奇想天外な行動を連発するのが初期の真島だった。桐生はそんな兄貴分を「読めねぇなぁ あんただけは……」と評している。
どこか愛嬌があって憎めない真島は大人気となり、脇役から『龍が如く』のメインキャラクターへとのし上がっていくこととなる。
■ドラマは真剣、戦闘ではっちゃける! 深みが増した『4・5』時代
『龍が如く3』まで破天荒なキャラクターとして定着した真島だが、『龍が如く4 伝説を継ぐもの』以降からシリアスな態度を見せることが増えていった。
『龍が如く4』では敵対組織への襲撃に、唯一の兄弟分・冴島大河だけを向かわせ、死刑囚として25年を無為に過ごさせた日々を悔いる一面を見せている。いつも陽気で予測不可能な真島が他人を思いやる常識を持っていた事実に、多くのファンが驚いた。
さらに『龍が如く5 夢、叶えし者』では、かつて結婚したが裏社会の人間ゆえ破局した過去が明かされる。周囲に恐れられながらも、思慮深く繊細な内面を兼ね備えた二面性あるキャラとして昇華していったのが、この頃の真島だ。
……と、ストーリーは非常にシリアスなのだが、戦闘では一転、ギャグと紙一重な超人ぶりを発揮し始めるのもこの時期だ。
『4』では、ドス(小刀)を片手に体ごとコマのように回る奇怪な技を披露。右足を軸にし、高速回転しながら冴島を切り刻もうと迫る絵面がシュールすぎる。回転を止められた瞬間に「あら?」と言うのがやけにかわいい。
極めつけは『5』の冴島パート最終戦での“分身の術”だ。比喩でもなんでもなく、実体のある分身体が5体現れて四方八方から襲いかかる。あまりにデタラメな攻撃に、初プレイで思わず笑ってしまった人も多いのではないだろうか。
『龍が如く』の男たちはしばしば「人間離れしすぎ」と言われるが、真島はその最たる者といって間違いない。