■敵であるガンダムと戦うため、ガンダムに乗る
箱が解放されると地球連邦政府は転覆するといわれる「ラプラスの箱」をめぐる戦いにおいて、マリーダはクシャトリヤのパイロットとして最前線に参加。クローンであるマリーダには、意識せずともガンダムタイプに対して敵意をむき出しにする刷り込みが行われており、「箱」へ導く鍵であるユニコーンガンダムと何度も刃を交えた。
ユニコーンガンダムの「NT-D」と呼ばれるシステムは、発動時に「ラプラスの箱」への手がかりを開示する。その発動にはニュータイプの素養を持った存在をぶつける必要があり、いまだ能力の底が知れないユニコーンガンダムに対して、マリーダはかませ犬的に対峙させられたのである。
激しい戦闘の末に連邦軍の捕虜となったマリーダは、地球で強化人間として再調整され、自我を喪失。憎しみの感情を増幅させられた状態で、ユニコーンガンダム2号機「バンシィ」のパイロットにされた。
フラッシュバックする記憶やバナージ・リンクスによる説得など、さまざまな要因からくる激しい頭痛に苛立ちを覚えながらもユニコーンガンダムと交戦。だが最終的にはジンネマンによる懸命の説得と、本来は敵であるはずのガンダムに自身が乗っていることで取り乱し、意識を失って再びジンネマンのもとへと戻った。
■自らの意思で、人々の道を照らす光となる
こうして自我を取り戻したマリーダは、自身の取るべき行動に迷いを覚えたバナージに道を示し、ミネバの大きな決断も後押しをして、過去の絶望に捕らわれるジンネマンの心を救う。
そしてバナージたちと共に臨んだ最終決戦では、体調が万全ではない状態でクシャトリヤ・リペアードを駆り、リディ・マーセナスが搭乗するバンシィ・ノルンと交戦する。
パイロットのリディが、バンシィ・ノルンの「NT-D」によって憎しみを増幅させられていることを知ったマリーダは、その憎しみから彼を開放すべく、バンシィの放ったビームマグナムをあえて無抵抗で受け、安らかな笑みを浮かべてその命を散らせた。
結果、リディは自身の犯した過ちから正気を取り戻し、彼女の死が及ぼした精神感応によってバナージも窮地から脱することになる。
さらに思念体となったマリーダは、ミネバや関わった人々にも語りかけ、ジンネマンには「あなたは私の光。もう一度、私を生んでくれた光でした。ありがとう、お父さん……」と伝え、静かに消えていった。
生まれながらに戦争の道具として扱われ、壮絶な人生を送りながらも、最後は自らの意思でその命を散らしたマリーダ。視聴者も含めて、深い悲しみに包まれたシーンだが、ビームマグナムの直撃を受けながら彼女が浮かべた満足げな表情が印象深い最期であった。
そして4月から始まる最新作『機動戦士Gundam GQuuuuuuX』も、『機動戦士ガンダムUC』と同じく「宇宙世紀」の世界観で描かれる。その放送開始が待ち望まれるが、同作においてはマリーダのような哀しき強化人間が新たに生まれないことを、切に願うばかりである。