■「オン・シュラ・ソワカ!」インド神話モチーフのトンデモ異世界アニメ
最後に紹介するのが、タツノコプロ制作の『天空戦記シュラト』(1989年より放送)だ。
調和神ヴィシュヌの導きで天空界へと転生した高校生・日高秋亜人(シュラト)。実はその正体は、天空界を守っていたデーヴァ神軍八部衆の一人“修羅王”だった。神の鎧シャクティをまとったシュラトはインドラの反乱に巻き込まれ、夜叉王として転生した親友・黒木凱(ガイ)と敵対することになる。
公式によると本作は「異世界転生」作品だが、シュラトやガイは現世の姿で、二人が試合で対峙している際に異世界へと「召喚」されている。ただ、どちらも修羅王と夜叉王の生まれ変わりのため、異世界の人物(神)が現世で人間に「転生」し、異世界に戻ったというちょっとややこしい設定だ。
また、『聖闘士星矢』(1986年より放送)や『鎧伝サムライトルーパー』(1988年より放送)の影響を受けてか、本作もいわゆる「バトルスーツ装着」や「美形キャラによるチームバトル」要素を取り入れ、女性を中心に人気を集めた。
この時期はちょうど萩野真さんの漫画『孔雀王』(1985年より連載)が人気となっており、インド神話や密教をモチーフにした本作もすんなり受け入れられた気がする。
今回紹介した以外にも、80年代の異世界アニメで忘れてはならない作品として、サンライズが制作した『聖戦士ダンバイン』(1983年より放送)もあげられる。妖精+ロボットというだけでも斬新だったのに、お姫さまや騎士たちが繰り広げるドロドロな人間関係にぼんやりながらも驚いた記憶がある。
OVAで発売された『デジタル・デビル物語 女神転生』(1987年発売)にいたっては、パソコンもまだ普及していない時代に、コンピューターで悪魔を召喚したり日本神話に絡めたりといった発想が斬新だった。
今も昔もワクワクな冒険を描いてきた「異世界アニメ」。これからも新たな魅力ある作品が現れるのを心待ちにしたい。