『魔神英雄伝ワタル』に『幻夢戦記レダ』も…今の“転生モノ”と何が違う?1980年代に大人気「異世界アニメ」女子もトリコにした“非日常感”の画像
魔神英雄伝ワタル スペシャルプライス版 Blu-ray BOX ©SUNRISE・R

 2010年頃になると「小説家になろう」をはじめとした小説投稿サイトの普及により、私たちが住む現実世界とは別の世界で主人公が活躍する、いわゆる「異世界モノ」が人気となった。

 長月達平さんの『Re:ゼロから始める異世界生活』(2012年より連載)、伏瀬さんによる『転生したらスライムだった件』(2013年より連載)などの人気作の影響を受けてか、今でも「悪役令嬢系」、「追放系」など多くの「異世界モノ」の作品が誕生している。

 ところで、今から40年近く前の1980年代にも「異世界モノ」がブームとなったが、実は両者には大きな違いがあるのをご存じだろうか?

 ざっくりいえば、前者は主人公が現実世界で“死亡”やそれに順ずる状態となり、異なる存在として異世界へと“生まれ変わる”「異世界転生」が多い。後者は“召喚”などで異世界に“移動”する「異世界転移」のため、役目を終えた主人公が現実世界へと“帰って”いく場合が多かった。 

 今回は、そんな80年代にいろいろと話題になった「異世界アニメ」を振り返っていく。

※本記事には各作品の内容を含みます

■「おもしろカッコいいぜ!」デフォルメロボやRPGのような世界観で子どもを夢中にさせた人気シリーズ

 サンライズ制作のロボットアニメ『魔神英雄伝ワタル』(1988年より放送)は、「神部界」に連れてこられた小学4年生・戦部(いくさべ)ワタルが、悪の帝王ドアクダーから神々や創界山を救うため、魔神・龍神丸とともに戦う物語である。

 本作の特徴といえば、「大きな顔」で寸足らずなデフォルメロボットや、アニメーター芦田豊雄さんデザインの魅力的なキャラクターに加え、当時としては目新しい「RPG要素」が盛り込まれた点だろう。

 ロボットなどのデザインは80年代に大流行したロッテのチョコレート菓子『ビックリマンチョコ』の「悪魔VS天使」シリーズ(1985年より発売)の影響を感じさせ、世界観にはファミコンをはじめとした空前のテレビゲーム・ブームが取り入れられており、子どもたちの好きな要素をギュっと詰め込んだわけである。

 また、主人公・ワタル役の田中真弓さん、忍部(しのびべ)ヒミコ役の林原めぐみさん、渡部(わたりべ)クラマ役の山寺宏一さんなど、当時若手だった現在のレジェンド声優の好演も忘れてはならない。

 その後も『魔神英雄伝ワタル2』(1990年より放送)や『超魔神英雄伝ワタル』(1997年より放送)などが制作され、2025年1月12日からはシリーズ最新作『魔神創造伝ワタル』が放送。登場人物などは刷新するも、令和版でも「大きな顔」といったデフォルメ要素は健在で、今回もYouTube(作中ではRyuTube)など子どもたちが夢中になっている要素を大胆に取り入れている。

 本作を含め、ワタルシリーズに連なる『魔動王グランゾート』(1989年より放送)、『超力ロボ ガラット』(1984年より放送)や『覇王大系リューナイト』(1994年より放送)のような、「大きな顔」のサンライズ制作ロボット作品を称して「サンライズデフォルメロボット」とも呼ぶそうだ。 

 ちなみに女性である筆者と友人たちは、『グランゾート』のウサ耳少年・ラビ推しだった。

■OVA黎明期に多くのファンを魅了した「異世界+少女バトル+ビキニアーマー」の意欲作!

 次に紹介するのは、OVA(オリジナル・ビデオ・アニメ)黎明期に制作され、そのクオリティの高さから今なお語り継がれる、カナメプロダクションと東宝による『幻夢戦記レダ』(1985年に発売)。

 昭和のファンタジーといえば少年の主人公が主流だったなか、少女が剣を振るって戦う本作はまさに新鮮だった。

 物語は17歳の女子高生・朝霧陽子が、「レダのハート」を狙うゼルにより異世界・アシャンティへと引き込まれることからはじまる。ゼルの野望を打ち砕き元の世界へと戻るため、陽子はレダの戦士として戦うことになる。 

 キャラクターデザインや作画監督を担当したのは、ゲーム『テイルズ オブ』シリーズなどで知られる、いのまたむつみさん。監督は『ポケットモンスター』シリーズの湯山邦彦さん、音楽は『エヴァンゲリオン』シリーズの鷺巣詩郎さんなど、そうそうたる顔ぶれである。

 さらに、陽子の声を鶴ひろみさん、人語を話す犬リンガムを富山敬さん、敵美形キャラ・ゼルを池田秀一さんが担当し、こちらも多くのアニメファンをうならせた。 

 さて、本作は今から40年も前のビデオテープ作品だが、全1話・70分で12000円と、今のアニメDVDと変わらぬお値段。とはいえ、『週刊少年ジャンプ』が現在(2025年)300円程度に対して1985年は170円だったので、アニメファンにとってOVAはまさに高嶺の花だった。

 そんな本作で印象的な要素といえば、陽子のサイドテールと「ビキニアーマー」だろう。アメコミや寺沢武一さんの『コブラ』(1978年より連載)でしか見たことのなかった「ビキニアーマー」は、『ドラゴンクエストIII そして伝説へ…』(1988年発売)に登場した女戦士の衣装で一躍有名になったが、筆者にとっては本作が今も印象深く記憶に刻まれている。

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