
2000年を過ぎた頃から小説投稿サイト『小説家になろう』に多数投稿され、爆発的なブームとなった”異世界転生”ものの作品たち。現在は一大ジャンルに成長を遂げ、ほぼ毎クール複数作品がアニメ化されている。
そんな異世界転生ものの作品は「転生前の死因」も注目ポイントの一つだ。きっかけとしてもっとも多いのは、交通事故死だろう。なかでも、トラックにひかれるパターンは非常に多い。
しかしながら異世界転生ものの中には「え、こんなことで?」と思うような理由で命を落としてしまったキャラも存在する。今回は、そんな意外な死因を見ていこうと思う。
※本記事には各作品の内容を含みます
■未練が残る転生ナンバーワン『この素晴らしい世界に祝福を!』
『この素晴らしい世界に祝福を!』は、暁なつめさんが「自宅警備兵」の名義で連載していたライトノベルだ。同作を原作としたアニメが人気となり、これまでに劇場版・ゲーム・スピンオフと様々なシリーズが発表され、原作は累計発行部数1000万部(2021年11月時点)を記録する大ヒット作となっている。
主人公・佐藤和真は、ゲームに明け暮れる引きこもりのオタク高校生。あるとき彼は、人気のネットゲームの初回限定盤を買うために久々に外出した。しかし、3日の貫徹明けだったためHPはほぼゼロ。なんとかゲームを入手し、フラフラになりながら帰路についた。
その途中、女子高生がトラックにはねられそうになっているところを目撃した和真は、とっさに彼女をかばって命を落としてしまう。他人のために身を投げ出すとは、勇気のある行動だ。
……が、死後の世界で目覚めた和真は、転生担当の女神・アクアから自身の死に際を聞いて愕然とする。なんとトラックだと思っていた乗り物は実はトラクターで、肝心の死因は“交通事故”ではなく、”トラックにひかれたと勘違いしてのショック死(失禁+心臓麻痺)”だったことを知るのだ。
しかも、トラクターはもともと女子高生の前で止まる予定だったのに、和真がかばって突き飛ばした怪我をするはずではなかった彼女まで重傷を負ってしまったという踏んだり蹴ったりの状況だったのだ。“こんな珍しい死に方したのはあなたが初めてよ”と、アクアは大爆笑していたが、あまりにも不憫な死因である。
■他殺系転生は殺害に至るルートがバラエティー豊か
他殺による転生も、多々描かれるパターンだ。
たとえば、カルロ・ゼンさんの『幼女戦記』。主人公のターニャ・フォン・デグレチャフは生前、日本でサラリーマンとして働く30代の男性だったが、リストラした社員に逆恨みされ駅のホームから突き落とされてしまった。
合理的でキツイ性格ゆえ敵を作りやすいタイプではあるが、社員も社員で無断欠勤をするなど問題点のある人物だったので、やりきれなさは残る。
また、他殺で転生したサラリーマンといえば、伏瀬さんの大ヒット作『転生したらスライムだった件』の主人公、リムル=テンペストこと三上悟も忘れられない。
大手ゼネコンに勤めるサラリーマン(37歳・恋人いない歴=年齢)だった彼は、ナイフを持った通り魔から後輩の田村とその彼女をかばって刺されてしまったのである。
これといって華のある人生を送ってこなかった悟は死の間際、田村に「家のパソコン…ハードディスクの中身を風呂に沈めて…完全に消去してくれ」と頼み、童貞であることへの未練をこぼしながら転生していった。
さらに、小鈴危一さんの『最強陰陽師の異世界転生記 〜下僕の妖怪どもに比べてモンスターが弱すぎるんだが〜』のように、他殺を機に自ら転生するというパターンもある。
同作の主人公、セイカ・ランプローグは生前、歴代最強の陰陽師・玖峨晴嘉として名を馳せていた人物だ。しかしその力を疎ましく思う朝廷の策略にハマり、弟子を人質に取られ、最終的には朝廷の命を受けた自身の愛弟子の手でとどめを刺されてしまう。
燃え盛る炎の中、自分に足りないものは狡猾さだと考えた晴嘉は「次はうまくやる」と自らに転生術をかけるのだった。
死に至るルートはさまざまだが、他殺の場合はいずれも転生後の人生よりも犯人への恨みが強くなってしまいそうだ。