
世界観における戦争という背景が、時に残酷な描写を生む『機動戦士ガンダム』シリーズ。アニメと言えども容赦のないキツい描写もあれば、共に戦う戦友や、家族・友人の死など、視聴後に気分が落ち込んでしまうことも少なくない。
そうした描写のなかで、関連するキャラクターが発する何気ない一言には、その死がより現実的なものとして突きつけられるような悲痛さが込められている。今回はそんな『ガンダム』シリーズより、聞いただけで胸が痛む悲痛な言葉を振り返っていこう。
※本記事には各作品の内容を含みます
■「アーサーなんだぜ…?」受け入れたくないという感情と受け入れざるを得ない現実
まずは、『機動戦士ガンダムF91』より、主人公のシーブック・アノーが発した一言から。
宇宙コロニー「フロンティアIV」で学生として平凡に暮らしていたシーブックだったが、突如、私設軍隊「クロスボーン・バンガード」から襲撃を受け、避難を余儀なくされる。そんな避難行動のさなか、戦争博物館に保存されていたモビルスーツ(MS)・ガンタンクRー44にアーサー・ユングら複数の友人が同乗し、無謀な応戦に出てしまうのだ。
シーブックの制止も虚しく戦場に出たガンタンクだったが、敵のMS、デナン・ゲーのビームサーベルに斬られ、あっさりと戦闘不能になってしまう。
ガンタンクの肩部でバズーカを構えていたアーサーは、この時の爆風により吹き飛ばされ、建物の外壁に激しく叩きつけられたのちに落下。そのまま動かなくなってしまうのだ。
付近での戦闘が落ち着き、倒れ込むアーサーに駆け寄るシーブック。だが、アーサーは瞳孔を開きぐったりと地面に倒れ込んだまま、帰らぬ人となったのだった。
激しく揺さぶり呼びかけるシーブック。友人のジョージ・アズマから「やめなよ。もう楽にさせてやんなきゃ……」と制止されると、シーブックは「だってよ……アーサーなんだぜ……?」と、涙ながらに漏らす。
目の前にいるのは、ついさっきまで当たり前に学生生活を共にし笑い合っていたアーサーであり、同時にそんな彼の「遺体」でもあるという残酷な現実。
受け入れたくないという感情と、目の前で明確に横たわる現実がシーブックの中で渦巻いている様子を現しているような、視聴者も胸が痛む生々しい言葉の一つであった。
■「ミンチよりひでぇよ…」人間に向けられるべきではない残酷で悲痛な言葉
続いては『機動戦士ガンダム0080 ポケットの中の戦争』より、連邦軍兵士がこぼした一言を紹介したい。
一年戦争中、サイド6の中立コロニー「リボー」で暮らしていた少年、アルフレッド・イズルハ(アル)は、少年らしい好奇心の一つとして、どこかで起こっている戦争やMSに憧れを抱いていた。
そんな中、コロニー内へ突如墜落したジオン軍のMS・ザクII改のパイロット、バーナード・ワイズマン(バーニィ)と出会い、少しずつ心を通わせていく。
戦争が激化していく中、クリスマスまでに連邦軍の新型MS・ガンダムNTー1を破壊できなければ、ジオン軍による核攻撃がサイド6におこなわれると聞いたバーニィは、一度は単身で脱出しようと試みるも、親交を深めたアルや散っていった仲間たちに後ろ髪を引かれ、ガンダムと戦うことを決意する。
バーニィがガンダムとの交戦を開始する直前、アルはジオンの艦艇が投降したことにより核攻撃が白紙になったことを知る。もはやその戦闘に意味がないことを伝えるため、アルはバーニィのもとへと走った。しかしそんなアルの想いも虚しく、バーニィの乗るザクはコックピットをビームサーベルで貫かれ、爆発を起こしてしまう。
その様子を茫然と眺めるアル。その後、連邦兵士たちによる戦いの後処理がおこなわれるのだが、その際、ザクのコックピット内の様子について「バラバラに吹っ飛んじまってる。ミンチよりひでぇよ……」という声が聞こえてくるのだ。
かつては、戦争における「戦い」や「MS」などの勇敢さに憧れを抱いていたアルの目の前で、兄のように慕っていたバーニィが命を落とし、あまりにも無惨な最期を突きつけられるこのシーン。戦争がいかに残酷なものであるかということを再認識させられる。
そしてこの言葉により否が応でもコックピットの様子を想像してしまい、メインキャラクターのこれまでにない残酷な死に対して、このシーンのアルと同様、放心状態になってしまった視聴者も多かったのではないだろうか。