■テーブルクロスとライターを将棋盤に見立て…

 「雪山山荘殺人事件」に登場したダイイングメッセージは、いくつもの要素が絡み合って面白い。

 この事件では、被害者はテーブルクロスにダイイングメッセージを残している。そのテーブルクロスは格子模様のデザインで、被害者はその中のある部分にライターを置いて犯人をしめそうとしていた。

 しかし、犯人はそれを隠すためテーブルクロスをテーブルから落としてごまかす。そのため現場にやってきたコナンたちは、はじめはダイイングメッセージの存在に気付きもしなかった。

 だが、コナンはテーブルに残った血痕を見て、そこにテーブルクロスがあったと推測する。さらにライターにも残っていた血の跡から、それが本来置かれていたであろう場所に戻すことで、犯人を中原香織だと導き出す。

 被害者はマス目を将棋盤に見立て、ライターを駒にして香車の位置に配置することで香織をあらわしていたのだ。そして、テーブルクロスが将棋盤だと分かりやすくするために、あえて正座をして息絶えていた。

 いろんな要素が絡み合った珍しいダイイングメッセージで、それを残した被害者も、犯人によって隠されていたのに結局は気付いたコナンも、どちらにも驚かされる。

■コップの破片に隠されたメッセージ

 最後は「17年前と同じ現場」で残されたダイイングメッセージから。こちらのダイイングメッセージは科学の知識も使われている。

 被害者は犯人から逃れるために脱衣所へ身を潜め、犯人の手がかりになるものを残そうとした。ガラスのコップに書いてある英字で、犯人の「仙波」を表そうとしたのだ。

 その方法はかなり斬新で、ハサミで「SENBA」以外を切り取って残すというもの。初めて見たときは、ハサミでコップって切れるの?と驚いてしまった。

 それについては阿笠博士が解説しており、被害者はケモメカニカル効果を利用したと考えられる。ガラスに水中でハサミを入れると、水の分子が割り込むことでガラスが脆くなって簡単に切れるようになるらしい。

 しかし、被害者はダイイングメッセージを犯人に悟られないように、残った箇所を叩き割っていた。ガラスの破片が現場に無数に散らばる中、このダイイングメッセージに気付くなんてスゴすぎる。

 

 『名探偵コナン』では、どうやったらこれが犯人に結びつくの?といった難解なダイイングメッセージがいくつも存在する。そして、それが解けた時には、なるほど!と思うと同時にその練られ具合に感心してしまう。

 死ぬ間際の人の心理を垣間見ることもできるので、いろいろ考えさせられもする……。

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