『機動戦士ガンダム』真実は全然違う? なぜ連邦軍の大将「ゴップ」は無能者扱いされたのかの画像
DVD『機動戦士ガンダム 08』(バンダイナムコフィルムワークス) (C)創通・サンライズ

 『機動戦士ガンダム』に登場する「ゴップ」は、地球連邦軍参謀本部に所属する大将であり、その肩書から察するに相当優秀な軍人に思える。しかし、ガンダム作品では地球連邦軍の腐敗や無能な高官がしばしば描かれ、ゴップもそのうちのひとりと見なす人もいたようだ。

 実際、一年戦争をテーマにした一部のゲームで、ゴップは最低クラスの能力値にされたこともあり、そこから「無能」な人物と思い込んだ人もいるかもしれない。

 だが、そうしたゴップの評価は本当に正しいのだろうか。彼のアニメのなかでの言動や、もたらした結果を見ながら再確認していきたい。

※本記事には作品の内容を含みます。

■なぜゴップの評価は低くなるのか

 アニメの第29話「ジャブローに散る!」で初登場したゴップ。地球連邦軍のもうひとりの大将であるレビルが前線で指揮を執る現場主義の指揮官だったのに対し、ゴップは南米アマゾン川流域にある地下基地ジャブローに留まり続けた。

 司令部にこもる姿を揶揄(やゆ)して「ジャブローのモグラ」という不名誉なあだ名をつけられたことでも知られる。

 またゴップは、ようやくジャブロー基地にたどり着いたホワイトベース隊について「永遠に厄介者かな」と評したり、第31話「ザンジバル、追撃!」ではホワイトベースをティアンム艦隊を宇宙に上げるためのおとり扱いしたりしており、ずっとホワイトベース隊を見守ってきた視聴者に良い印象を与えなかっただろう。

 ほかにも「ソロモンが落ちれば、国力のないジオンは必ず和平交渉を持ちかけてくるよ。そこでこの戦争はおしまいだ」と楽観的に思える見通しを述べ、ミライ・ヤシマに対して「婿さんの面倒をみさしてくれ」と発言。今だったらハラスメントと受け取られかねない言葉を投げかけて、彼女を困惑させた。

 こういった言動や、冴えない風貌、どこか陰のある表情なども相まって、視聴者にマイナスのイメージを与えてしまった可能性はありうる。

■戦局を見極めた合理的判断

 そんな「モグラ」とまで揶揄されたゴップ大将ではあるが、地下に大規模な工廠まで備えたジャブローという要所を守り抜いた功績は、言うまでもなく大きい。ジャブローが健在だったからこそ、地球における連邦の反攻作戦も行えたのだ。

 そんな中、ホワイトベースがシャアにつけられて基地の位置を特定されてしまったのだから、要所を守る責任者としては愚痴のひとつも言いたくなるだろう。そもそも大将クラスの要職にある者が前線に出て、万が一のことが起こって指揮できなくなるほうが軍に対する影響は大きいはずだ。

 また、ホワイトベースをおとりにした作戦も非情に思えるが、結果的にはうまくいった。シャアはゴップの策略にまんまとはまり、ザンジバル隊とともにホワイトベースのほうを追撃した。

 一方、連邦軍の主力であるティアンム艦隊は、無事に宇宙へと上がっている。ザンジバルには高機動戦闘を得意とするモビルアーマー・ビグロをはじめ、ザクレロ、リック・ドムといった宇宙での戦闘に特化した強力な機体とパイロットが配備されていた。もしも彼らがティアンム艦隊に突撃していたら、相当な被害を及ぼしていたことが予想される。

 そしてゴップが口にしていた、ソロモンが陥落したらジオンは和平交渉に臨むだろうという読みも、実際に当たっていた。デギン公王とレビル将軍の間で秘密裏に和平交渉が行われようとしたが、ギレンが放ったソーラ・レイによって灰燼に帰している。あの攻撃さえなければ、ゴップの目論見どおり終戦していた可能性も十分ありえたのだ。

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