『ドラゴンボール』ほとんど出てこないのになぜ人気?悟空の父親「バーダック」の人間的魅力の画像
DVD『ドラゴンボールZ スペシャルセレクション』 ©バードスタジオ/集英社

 『ドラゴンボール』の主人公といえば、地球育ちのサイヤ人・孫悟空だ。強さを追求する生き様で世界中で愛される存在だが、彼の父親・バーダックはサイヤ人としてはなかなか特異な存在だったとわかっている。

 悟空とともに過ごした時間は短く、彼を地球に送り出して間もなく、フリーザによって抹殺されてしまったバーダック。当初は謎も多かった彼だが、『ドラゴンボール超 ブロリー』などを通じて新たな魅力が描かれ、ファンに愛されてきた。

 今回は、そんなバーダックの活躍や魅力について振り返っていこう。

※本記事には『ドラゴンボール』の内容を含みます 

■原作にも逆輸入されたアニメオリジナルキャラ

 バーダックが原作に登場するのはワンシーンのみである。それはナメック星でフリーザと悟空たちが戦っている時のことだった。

 パワーアップして現れた悟空が「カカロット」と呼ばれるのを聞いて、惑星ベジータを滅ぼした時に最後まで抵抗したサイヤ人を思い出すフリーザ。そのサイヤ人こそが、悟空とそっくりな見た目のバーダックだった。フリーザは、彼が悟空の父であることなど知る由もなかったが、二人のサイヤ人を心のどこかで重ねていた。

 原作ではこの回想でしか登場してないにもかかわらず、バーダックが人気なのはアニメ版が大きく関係している。実はバーダックの初登場はアニメ『ドラゴンボールZ たったひとりの最終決戦〜フリーザに挑んだZ戦士 孫悟空の父〜』であり、逆輸入的に原作にも登場したキャラだったのだ。

 その後もスピンオフ漫画『ドラゴンボール エピソード オブ バーダック』や、ゲーム作品のオリジナルストーリーで登場し、悟空よりもワイルドで、ぶっきらぼうでありながらも仲間想いのサイヤ人というキャラクター性が支持されていた。

 バーダックにとっての大きな転機となったのが、『銀河パトロール ジャコ』である。これは鳥山明さん自身が描いた『ドラゴンボール』の前日譚的な物語だが、そのコミックスにはおまけとして『ドラゴンボール-(マイナス) 放たれた運命の子供』というエピソードが収録されている。これは後に劇場版『ドラゴンボール超 ブロリー』の中でアニメ化もされた。

 ここでバーダックについて詳しく描かれ、アニメオリジナルの要素が強かった彼が、鳥山さんのお墨付きのキャラクターとなったのだ。性格などの設定も再考され、アニメオリジナルの彼とはまた違ったキャラクターにリブートされている。

 以下では、鳥山さんにより確立されたバーダックについて詳しく解説していく。

■優しい夫・父親としての姿

 バーダックは戦闘民族サイヤ人として、惑星ベジータで生活をしていた。そこを拠点にして他の星を襲撃するのを生業にしており、下級戦士として活動している。妻はギネというサイヤ人の女性で、彼女とのあいだに息子を二人授かった。一人は後に地球を襲撃することになるラディッツ、もう一人は幼くして地球に送り込まれたカカロット、後の孫悟空だ。

 仕事から戻ってきた際には「町は ずいぶんにぎやかだな」とギネと抱き合うようにして話したり、その後すぐに息子たちの様子をたずねたりと、バーダックは“優しい夫で父親”として描かれている。悟空を地球に送り込むとき、名残惜しそうに手を伸ばしながら「ぜったいに生き延びるんだぞ」と語りかける姿も印象的だ。一言で言えば、あまりサイヤ人らしくない言動が目立つ。

 バーダック本人がギネに「おまえの甘ったるい病気がうつったんだ」と言っている通り、彼がこういう性格になったのは彼女の影響が大きいのだろう。とはいえ、それ以前から戦闘中に仲間を助けるような優しさも持っており、もともとサイヤ人としては珍しい存在だったのは確かだ。

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