『悪魔くん』や『ちびまる子ちゃん』、『ドラえもん』にも登場…名作漫画で「ノストラダムスの大予言」はどう描かれたのかの画像
DVD『ちびまる子ちゃん全集』1990年(ポニーキャニオン) (C)さくらプロダクション/日本アニメーション

 1500年代の人物でありながら、未来に起こるさまざまな事象を予言したことで知られるフランスの占星術師、ミシェル・ノストラダムス。

 医師であり、詩人でもあったノストラダムスは、『ミシェル・ノストラダムス師の予言集』(日本では『ノストラダムスの大予言』)という書籍を残しており、そのなかの「1999年、7の月、空から恐怖の大王が降ってくる」という一節は、人類滅亡の予言だとされ、当時の人々を恐怖に陥れた。

 当時の有名漫画のなかにも、この「ノストラダムスの大予言」にまつわるエピソードは数多く登場している。今回は「ノストラダムスの大予言」が巻き起こす珍騒動を描いた傑作エピソードについて見ていこう。

※本記事には各作品の内容を含みます

■過去のフランスで繰り広げられる人類存亡をかけた大冒険『悪魔くん』

 数多くの怪奇漫画を手掛けた漫画界の巨匠であり、妖怪研究家としても活躍していた漫画家・水木しげるさん。そんな水木作品において「ノストラダムスの大予言」が登場するのが、代表作の一つ『悪魔くん』だ。

 世界平和を夢見る少年が悪魔の力を借り、さまざまな怪異と戦うストーリーである本作。1993年に刊行された作品『ノストラダムス大予言』では、主人公の“悪魔くん”こと山田真吾が、なんと16世紀のフランスへと降り立って人類滅亡から世界を救うために奮闘する様子が描かれている。

 タイムスリップした悪魔くんは、後世に大予言を残したノストラダムス本人とも邂逅するのだが、本作におけるノストラダムスは「エホバの鏡」なる秘宝の力で未来を予見し、それを書き記していたという設定であった。

 ノストラダムス自体の出番は比較的少なく、真吾率いる「十二使徒」と、世界滅亡を企てる秘密結社「地獄の王」との激突が、最大の見どころだと言えるだろう。

 また、本作では水木作品ではお馴染みの妖怪たちも多く登場しており、さらにはジョン・F・ケネディやアドルフ・ヒトラーといった歴史上の人物もストーリーのなかに組み込まれ、意外な活躍を見せている。

 特殊な力を駆使した個性豊かな怪異たちの戦い、そして史実を存分に交えた社会風刺満載のシナリオと、水木さんならではのダークかつ骨太なシナリオが存分に味わえる一作となっている。

 はたして、過去の世界で悪魔くんは世界滅亡の予言を覆すことができるのか……その結末は、ぜひとも自身の目で確かめてみてほしい。

■世界の危機を目の当たりにした小学生たちのリアルな心境…『ちびまる子ちゃん』

 「ノストラダムスの大予言」が登場するのは、なにもホラーやオカルトをテーマとした作品だけではない。1986年より『りぼん』(集英社)にて連載が始まった、さくらももこさんの代表作『ちびまる子ちゃん』のなかでも、世間を騒がせたこの大予言が登場している。

 エピソードタイトルは、ずばり「まる子 ノストラダムスの予言を気にするの巻」。

 現実世界同様、まる子のクラスでも「ノストラダムスの大予言」の一説、“1999年に世界が滅亡する”という話題が大流行し、まる子が振り回されていく姿が描かれている。

 当初は予言を信じていなかったまる子だったが、騒然とするクラスメイトたちの姿や予言について取り上げたテレビ番組を目の当たりにし、徐々に「本当に世界が滅亡するのでは」と不安を抱くようになってしまう。

 本来ならば明日のテストに全力投球しなければいけないまる子だったが、どうせ世界が滅亡してしまうならば……と、なんと1999年まで全力で遊び続けることを決意。“あと25年もぐうたらできる”と、頑なに現実逃避し続けるまる子を引き戻そうと、家族たちが説得のため奮闘する姿もコミカルだ。

 世界滅亡に絶望してしまう一方、「どうせ世界が終わるなら」と開き直ってしまう感覚は、当時の大予言ブームを知る読者にとって共感できる部分も大きいのではないだろうか。

 コメディタッチに描かれてはいるものの、大予言が社会にもたらした漠然とした不安感と、それに対峙する子どもの目線や心境を見事に捉えた、実に巧妙なエピソードであった。

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