『電光超人グリッドマン』に『七星闘神ガイファード』も…“スター不在の時代”に生まれた「奇跡」、90年代特撮ヒーローが持つ「脱・王道」の面白さの画像
DVD『電光超人グリッドマン』VOL.1 ©円谷プロ

 『ウルトラマン』、『仮面ライダー』、『スーパー戦隊』……日本の“三大特撮ヒーロー”と呼ばれるこれらのシリーズは、昭和の時代に産声を上げ、令和となった現在でも最新作が放映され続けている。

 いわば日本のお茶の間に欠かせないヒーローとなっているわけだが、そんな三大特撮ヒーローも、実は平成の時代に、その確固たる地位が危ぶまれた時期があったことを知っているだろうか? 

 平成が幕を開けたばかりの1990年代は、迫りくる21世紀への不安からか、どこか80年代とも2000年代とも異なる空気感をまとっていた。そして、ブラウン管の中にいるヒーローは「ウルトラマン」でも「仮面ライダー」でもなかったのだ。

 今回はそんな独特の雰囲気を持つ90年代特撮ドラマについて振り返っていこう。

※本記事には各作品の内容を含みます

■ウルトラマンが海外進出。代わりに登場した巨大ヒーロー『電光超人グリッドマン』

 1980年から1981年にかけて放送された『ウルトラマン80』をもって、日本国内における連続ドラマの放送が中断された「ウルトラマン」シリーズ。1990年代に入ると、オーストラリアとの合作である『ウルトラマンG』やアメリカとの合作である『ウルトラマンパワード』などのように海外進出を目論むようになる。

 ここから1996年の『ウルトラマンティガ』放送開始までの期間、日本にはウルトラマンが不在だったのだ。

 そんな中、巨大ヒーロー枠として日本の平和を守っていたヒーローが、1993年放送開始の『電光超人グリッドマン』だ。

 本作は、中学生の翔直人、馬場一平、井上ゆかの3人が、ジャンクと呼ばれるコンピュータを駆使し、異次元からやってきたハイパーエージェント・グリッドマンとともに、魔王・カーンデジファーの野望を打ち砕こうとするストーリーが展開された。

 グリッドマンと怪獣たちによる戦いの舞台は、現実世界ではなく、コンピューター・ワールドとなっているが、さすがは円谷プロ製作である。PCの基盤をイメージに、緻密に作り上げられた電脳世界が目を見張るほどのクオリティを誇っている。

 作品の内容的なところを見ても、いまだインターネットが生活の中心にない時代でありながら、これからやってくる新たな常識への期待と不安を見事に描き切っており、時代を先取りした作品となっていた。

 近年では本作に対して新たなアプローチが成されており、『SSSS.GRIDMAN』をはじめとしたアニメシリーズも展開され、大ヒットを記録。そういった意味でも、時代の最先端を行っていた作品だったことがうかがえる。

■『七星闘神ガイファード』『超光戦士シャンゼリオン』…「仮面ライダー」不在の時代に登場した等身大ヒーローたち

 2000年以降の日本には当たり前のように存在している『仮面ライダー』だが、1990年代はライダーたちでさえ不在だった。

 90年代の特撮を語る上で、1996年というのはターニングポイントになった年である。この年、後に語り継がれるヒーローたちが数多く誕生したのだ。

 まず初めに語りたいのは、『七星闘神ガイファード』。本作は、『ゴジラ』などで知られる東宝が、ゲームメーカーであるカプコンと手を組んで製作した特撮ドラマである。東宝にとっては当時約7年ぶりとなる特撮テレビシリーズの製作となり、もともとはカプコンがゲーム作品として立ち上げた企画であった。

 拳法の使い手であり、武者修行の旅に出ていた主人公の風間剛は、兄が行方不明になってしまったことから道場へと戻るが、犯罪組織・クラウンの手により改造人間にされてしまう。戦士・ガイファードとして覚醒した剛は、兄の行方を追うとともに、クラウン打倒のための壮絶な戦いへと身を投じていくことになる。

 改造手術を受け、自身が怪物へと変貌をしたことを自覚し、正体を隠しながら戦う姿は「仮面ライダー」と重なる部分ではあるが、決して二番煎じではない。

 正義と苦悩の狭間で揺れ動く主人公の心情を見事に描写したリアリティあふれるストーリーは、どこか世紀末特有の人々が抱える「闇」と「不安」を表現しているようにさえ感じた。のちの『平成仮面ライダー』シリーズに大きな影響を及ぼしたと言っても過言ではないだろう。

 ガイファードと怪人による戦闘シーンにおいては、派手な必殺技や武器を用いて戦うというよりも、空手や拳法をイメージした肉弾戦がメインとなっており、まるで“格ゲー”をプレイしているかのような錯覚に陥る。カプコンが製作に名を連ねているだけのことはあり、他の特撮ドラマとは一線を画すアクション描写だった。

 この時代に製作された特撮ドラマはどの作品もストーリーが骨太であると同時に、アクションが今の時代では考えられないほどにド迫力極まりない。

 それは『メタルヒーロー』シリーズの系譜にある『重甲ビーファイター』、その続編である『ビーファイターカブト』にも言えることだろう。

 そして、90年代特撮を語る上で欠かせない作品と言えば、やはり『超光戦士シャンゼリオン』だ。本作があまりにも型破りだった点は、やはり主人公のキャラクター像にある。

 それまでの特撮ドラマのヒーローたちは、比較的硬派な印象が強かった。しかし、『超光戦士シャンゼリオン』の主人公は自由気ままな私立探偵。女性に目がないお調子者を主人公に据え、ヒーローに変身させるというアイデアは斬新だった。

 昭和の名残やトレンディドラマブームに乗っかった作風となっており、コミカルな印象も大いに与えてくる。『平成仮面ライダー』や『スーパー戦隊』のヒーロー像が大きく変わる転換期において、重要な役割を果たしたことは言うまでもない。

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