
いつでも少女たちの心をガッチリつかむ少女漫画。恋愛ものや学園ものなど、身近で憧れるシチュエーションをテーマにした作品が多いが、中でも『なかよし』『りぼん』『ちゃお』という小中学生向け少女漫画雑誌では、主人公が変身したり魔法を使うというファンタジー要素のある漫画も少なくなかった。
その背景には、1992年に連載開始しアニメ放送もされた武内直子氏による『美少女戦士セーラームーン』の社会的ヒットの影響も大きかったのだろう。
月刊誌である少女漫画雑誌では数巻で完結する作品が多く、連載を終えた作者はすぐに同じ雑誌で次作を連載するという形が多かった。
ヒット作を生み出した作者もその作品だけが代表作ではなく、さまざまなジャンルの少女漫画を生み出しており、中にはヒット作の次に手がけた漫画が「変身魔法少女もの」だという例は少なくない。
■『ときめきトゥナイト』の池野恋氏の次作も大ヒット
たとえば、『りぼん』で1982年から1994年まで連載され、大ヒットを記録した『ときめきトゥナイト』の池野恋氏も、次に選んだテーマが「変身魔法少女」であり、こちらもまたヒット作となった。
『ときめきトゥナイト』は、江藤蘭世、市橋なるみ、真壁愛良の主人公3人による3部構成の作品となっており、特に話題であった第1部は、吸血鬼と狼女の両親を持つ魔界の女の子・江藤蘭世が好きになった男の子・真壁俊に振り向かれたくて奮闘する物語だ。
アニメ化もされた同作は、人間界と魔界という、生きる世界を越えたドキドキの恋の設定に加え、クールな真壁俊の人気もすさまじいものだった。
そんな池野氏が同作完結後の1995年から、音楽プロデューサーで作詞家の秋元康氏とタッグを組んで生み出したのが1996年まで連載された『ナースエンジェルりりかSOS』だった。
同作は原案を秋元氏が担当し、主人公の小学4年生の女の子が「ナースエンジェル」に変身し地球侵略を企む敵と戦うという内容。世に変身少女ものの作品は多いが、ナースの要素を含むというのも斬新だった。
変身に至る過程やナースエンジェルの衣装、アイテムなどは王道の魔法少女路線で、1995年にアニメ化。ポップな絵柄にもかかわらず物語のラストでは地球を救うために主人公が自身の命を犠牲にする決意をするなど、重すぎるシリアスな展開もみられた。
同じく『りぼん』で、1992年から1995年まで連載された『ママレード・ボーイ』が大ヒットした吉住渉氏にも貴重な「変身魔法少女漫画」がある。
『ママレード・ボーイ』は、両親が別の夫婦と相手を交換して再婚し、主人公が相手夫妻の息子と同居するところから物語がスタートするという斬新な設定で超大ヒット。これまでにアニメ化のほか、日本で実写映画化、台湾でドラマ化もされている。
その後『君しかいらない』『ミントな僕ら』『ランダム・ウォーク』を経て2000年から連載されたのが『ウルトラマニアック』。クールな少女とほんわかした魔法少女の女子2人の組み合わせがかわいらしい学園コメディだ。作者の吉住氏の作品はこれまで学園恋愛ものが多かったが、実は魔法少女ものはかねてから「一度やってみたかった」のだという。