■愛情と憎悪の狭間で揺れ動く悲しき少女…『デッドマン・ワンダーランド』シロ
2007年より『月刊少年エース』(角川書店)にて連載された、片岡人生氏と近藤一馬氏のタッグによる『デッドマン・ワンダーランド』。無実の罪で刑務所へと送られてしまった少年が、目覚めた特殊な能力“罪の枝”を用いてデッドマンとなり、巨大な陰謀へと立ち向かっていくサバイバルアクション作品だ。
本作においてまさかの展開で読者を驚かせたのが、物語のメインヒロインとしても活躍していた少女・シロだろう。
白い肌、赤い瞳といったどこか幻想的な見た目の少女で、主人公・五十嵐丸太とは幼馴染という関係だ。年齢に見合わない純粋な立ち振る舞いもさることながら、痛覚を失っていたり、常人離れした怪力を使いこなしたりと、謎多き人物として描かれていた。
ヒロインとして活躍するシロだが、なんと彼女こそ大災害である「東京大震災」を起こし、丸太の同級生を皆殺しにして、彼が刑務所に入れられるきっかけを作った殺戮者「赤い男」の正体であった。まさにすべての元凶と呼べる存在だったのである。
実は彼女、幼少期の丸太が受けるはずだった人体実験の身代わりとして用意された存在で、壮絶な実験の果てに「赤い男」としての人格が芽生えてしまったのだ。
丸太に対しては愛情と同時に、自身を身代わりとして生きていたことへの憎悪も抱いており、二つの相反する感情のなかで常に揺れ動いていたのである。
すべての能力を取り戻した彼女は刑務所を島ごと崩壊させ、駆け付けた丸太と対峙。互いの生身の思いをぶつけ合う、激しくも切ない最終決戦が始まってしまうのだった。
主人公の仲間のキャラクターが最終局面にてその隠されていた素性を明かし、物語の最大の敵として立ちはだかる展開は、まさに大どんでん返しとしてストーリーを盛り上げてくれる。
己の理想のため、世界への憎悪、幼少期からの因縁……キャラクターたちが敵へと転身した理由も実にさまざまだ。
終盤で明かされるラスボスのまさかの正体に、物語のキャラクターたちはもちろん、作品を追いかけている読者も度肝を抜かれてしまったことだろう。