
1993年に放送が始まったテレビアニメ『機動戦士Vガンダム』。現在のところ、初代ガンダムから続く「宇宙世紀」を描いたテレビアニメ作品としては、もっとも後年に生まれた作品となる。
地球連邦軍が形骸化し、宇宙コロニーへの支配が及ばなくなってきたところで、サイド2というコロニー郡が「ザンスカール帝国」を名乗って武力侵攻を開始。反撃する力のない連邦軍にかわり、民間の抵抗組織「リガ・ミリティア」が立ち上がって戦うというストーリーだ。
この戦争になし崩し的に参加することになり、ガンダムに乗る主人公の「ウッソ・エヴィン」は、まだ13歳の少年。モビルスーツ(MS)に乗って戦うガンダム主人公としては最年少である。
息子が「ニュータイプ」だと確信したウッソの両親は、彼が幼い頃から戦闘における英才教育を施し、周囲の大人たちも彼の能力を見て「スペシャルな少年」と呼ぶ場面があった。
実際にウッソがモビルスーツに乗るようになると、優れた身体能力や卓越したニュータイプ能力をいかんなく発揮。そんなウッソが劇中で披露した圧巻の操縦技術や、固定観念にとらわれない奇想天外な発想力を示した場面を振り返りたい。
※本記事には作品の内容を含みます。
■すでに「うしろにも眼」を……?
第6話でウッソは、「ヴィクトリーガンダム(Vガンダム)」のコアファイターと上半身パーツであるハンガーを合体させた「トップファイター」と呼ばれる形態で交戦。敵MS「ゾロ」3体を相手にしながら、早々に1体を退ける。
その後、下半身パーツであるブーツと合体し、MS形態となってからのウッソの戦闘はさらに凄まじい。残る2機の内の1機と格闘戦をしている最中に、ウッソの背後からもう1機の敵機が迫ってきた場面でのこと。
ゾロのビームサーベルが死角からVガンダムを切り裂いたかと思いきや、ウッソは後方を振り返りもせず、絶妙なタイミングで肘部にあるビームシールドを背面に展開して防御。ビームサーベルを防ぐと同時に、展開したシールドでゾロの腕部を切断することにも成功している。そしてVガンダムの頭部を180度後方に旋回させると、バルカンで即座に反撃も加えた。
さらにビームライフルを持った右腕を人体では不可能な角度まで回し、曲芸のような態勢で射撃を命中させて、敵を撤退に追い込んでいる。
アニメ『機動戦士Zガンダム』のなかで、アムロ・レイがカミーユ・ビダンに「うしろにも目をつけるんだ!」と独特な表現で指導する場面があったが、ウッソは6話にしてそれをやってのけたのである。
■柔軟な発想がなせる業? 体当たり飽和攻撃
第43話でウッソは、ザンスカール帝国が誇る最強クラスのMS「ザンネック」を駆るファラ・グリフォンと激しい戦闘を繰り広げる。「ザンネックキャノン」と呼ばれる長射程、高出力のビーム砲に、ウッソとV2ガンダムは何度も苦しめられた。
この戦いでもV2ガンダムは損傷を受けるが、ウッソは援護に来た戦艦にありったけのV2のブーツ(下半身パーツ)の射出を要求する。
そしてウッソのV2ガンダムは、多数のブーツを従えたまま、再びザンネックに肉薄。目前で「光の翼」を使った急旋回をみせてザンネックの眼をくらました瞬間、従えていたブーツから射撃の雨を降らせた。
慌てて防御するザンネックに対し、ウッソはそのままブーツを体当たりさせるという大胆な攻撃を敢行。ブーツによる突撃を連続で食らったザンネックは大ダメージを受け、ウッソはV2でトドメを刺した。
V2の下半身パーツを、まるで「ファンネル」のように扱ったウッソの発想と、それを成し遂げた操縦技術には驚かされるばかりだ。