■相性抜群!? 犬のような人懐っこさがある寺島伸夫(ノブ)
章司と別れた奈々が次に恋に落ちたのは、もう1人の主人公・ナナのバンドメンバーであるノブこと寺島伸夫だ。
学生時代に心を閉ざしていたナナを、明るく人懐っこいノブは気にかけ、やがて恋人になる本城蓮(レン)とも引き合わせた重要なキャラクターだ。そしてナナの歌に惚れ込み、上京してきたノブの存在は、ナナにとってもなくてはならないものだった。
ノブは最初から奈々に少しずつ惹かれていたようだが、奈々は章司と別れたあと、ずっとファンだったバンド「TRAPNEST」のリーダー・一ノ瀬巧(タクミ)と関係を持っていた。
だが、人気者で多忙なタクミと恋人未満の関係がズルズルと続き、苦しむ奈々。そんな時、ノブから「好きだ」と告白され、奈々はタクミときっぱり決別。ノブと付き合うことを決める。
優しく人情味があふれるノブとの恋人関係は、温かく穏やかな時間が流れていた。ノブは一途に奈々を想ってくれ、悲しい恋愛が多かった彼女にとって夢のような時間だっただろう。
しかし、2人の関係は長くは続かなかった。奈々の妊娠が発覚したことでタクミが奈々の面倒を見ることになり、ノブはろくに話すこともできないまま奈々と別れることになる。
誰が見てもお似合いのカップルで、ノブと結婚したらどんなに幸せだったかと想像せずにはいられないファンは多いだろう。しかし、これもまた運命で、奈々は自分の選択を信じて今も前を向いている。
■結婚相手は大ファンだったバンドマン! 一ノ瀬巧(タクミ)
奈々が結婚相手に選んだのは、タクミだ。ナナの計らいでタクミと出会った奈々。ナナがレンと再会するために尽力してくれた奈々にお礼として、彼を食事の席に呼んだのだ。
憧れの人に会うだけで終わるはずだったが、意外にも奈々とタクミの関係は進展していく。かといって、付き合うでもなく曖昧な関係が続いていくのだが……。
結婚の決定打は奈々の妊娠だった。お腹の子どもの父親として有力だったタクミは、奈々と結婚することを即決する。せっかちを自負するタクミはその後の行動も早く、身重の奈々に家を用意し、あっという間にナナと暮らす「707号室」から連れて行ってしまうのだ。
これ以降、奈々とナナの距離は大きく開いてしまう。奈々にとっても、ナナやノブといった大切な人たちと離れてしまう選択はつらかっただろう。それでも彼女はお腹の子どもを守るため、最善を尽くしたのだと思う。
タクミとの結婚生活は、奈々が生まれ育ったような温かなものではなかったかもしれない。それでも、のちに描かれる奈々と子ども、そしてタクミと子どもの姿を見れば、2人はそれなりに夫婦としてうまくやっているのだと感じる。
“恋多き女”として何人もの男性と恋に落ちた奈々。彼女が行き着いた先は、心から大好きな人でないにせよ、大ファンとして慕っていたタクミだった。不倫や浮気などあまり恋愛運がない奈々だが、安定する場所に巡り会えて良かったのかもしれない。
奈々のほかにも、本作のキャラたちは次々に恋愛模様を繰り広げている。それも近場で起こることが多いので、ついこの間まで別のキャラと付き合っていたのに……というような事態も多々起こる。
そう考えると、もう1人の主人公であるナナは終始一途にレンを想い続けているのだから、それはそれですごいことだとあらためて思った次第だ。