
2000年より『Cookie』(集英社)で連載が始まった、矢沢あい氏の名作『NANAーナナー』。本作は同じ名前を持つ小松奈々と大崎ナナという女性が主人公で、まったく違う境遇で育った2人が偶然出会うところから始まる物語だ。
同じ名前だが、性格や趣味嗜好も正反対の2人。だが、なぜかしっくりきてしまう不思議な縁で、彼女たちの運命は大きく動いていくことになる。
そんな主人公の1人、奈々は“恋多き女”としても知られている。今回は、作中でも多くの男性たちと恋愛を繰り広げた彼女が心を奪われた男性たちについてご紹介しよう。
※本記事に各作品の内容を含みます
■年上男性の余裕にキュン! 高校時代に不倫関係だった浅野崇
奈々の恋人として作中で初めて登場するのが、浅野崇だ。スーツをパリッと着こなす浅野は、体調不良で倒れてしまった奈々を介抱してくれたことがきっかけで出会った。
名乗らずに立ち去ってしまった浅野だが、自身のバイト先だけ伝えていた奈々。そして2週間後、奈々のバイト先に浅野が現れ、2人の関係は始まることとなる。
浅野は物腰も柔らかく、当時高校生だった奈々はすぐに彼に夢中になる。しかし、彼の指には結婚指輪が……既婚者であることが分かっていても、奈々は関係をやめることができなかった。
そんな奈々の様子を見て、親友の早乙女淳子は呆れていた。外でデートすることはなく、いつもホテルで逢瀬を重ねる2人。しかし、浅野が東京へ転勤が決まったことで関係は突然終わることになる。
その後、東京で浅野と再会するサプライズもあり、高校時代よりも少し大人になった奈々と浅野が自身の過ちに決別するシーンは、清々しく印象的なシーンだった。
浅野の魅力といえば、やはり大人の魅力だろう。どこか浮き足立っていた奈々にとって、しっとりと大人な浅野は、憧れずにはいられない存在だった。とはいえ、彼がやっていたのはただの不倫であり(しかも女子高生相手)、褒められた行動ではないのだが……。
脇役ながら、地元時代の奈々を語るにあたって、外すことはできないキャラである。
■奈々にとって忘れられない男性! 上京するきっかけになった遠藤章司
次に奈々の恋人になったのが、地元の専門学校で出会った遠藤章司だ。章司は淳子の幼馴染で、淳子に話しかけてきたことで奈々とも出会う。
お互いがすぐに好意を抱いたこともあり、トントン拍子で付き合うことになる章司と奈々。10代らしいフレッシュな恋愛を楽しむ2人は、世話焼きな章司と手がかかる奈々で相性も良かったように思う。
2人に転機が訪れたのが、章司が東京の美大を受験することになった時だ。浪人し、ようやく東京の美大に合格した章司。奈々は章司についていくためバイトで貯金をしており、合格の連絡を受けてすぐに上京するほどの気合の入れようだった。
一時期は奈々と結婚したいとさえ思っていた章司。しかし奈々が上京してから、少しずつ2人の関係はズレていく。
すれ違い始めた2人に追い討ちをかけたのが、章司と川村幸子との出会いだ。章司のバイトするファミレスに新しくバイトとして入ってきた幸子。章司はかわいらしい彼女を見て自身を制するものの、惹かれ合う2人の関係は止めることができなかった。
やがて、奈々と幸子の間で板挟みになるも、最終的に彼が選んだのは幸子だった。夢見がちで明るい奈々が好きだった章司だが、それよりも大切な存在ができてしまったのだ。
章司との別れは奈々にとって大きなダメージとなったが、その後の彼女の人生を思えば、必要なものだったのかもしれないとも思える。
悲劇的なシーンも多い本作だが、のちのシーンで仲睦まじく章司と幸子が暮らしている様子がうかがえたのは、なんだか救いであった。