■子どもも挑戦者も怖かった「悪魔の館」の番人たち
人気アトラクションのひとつ「悪魔の館」は、六角形の部屋がいくつものドアでつながった館を抜ければクリアというシンプルなものだ。
だが、館にはストロング金剛さんや、丹古母鬼馬二さん、亜仁丸レスリーさんらが扮する悪魔が潜んでおり、捕まると顔面に墨を塗りたくられるか、館に隣接する池に突き落とされるかという最悪の2択が待っている。
テレビでは上空からの映像が流れるため、挑戦者と悪魔の動きが手に取るようにわかるのだが、挑戦者からは自分のいる部屋以外の様子がわからない。
ドアを開けたら、いきなり悪魔が「ガオー」などと大声で襲い掛かってくるものだから、当然驚いてしまうし、とくに女性の挑戦者は悲鳴をあげまくっていた。当時小学生だった筆者は、挑戦者が捕まらないかドキドキしながらテレビを見ていたものだ。
■個性的な挑戦者の数々…人気の「キョンシー」も登場
番組がある程度定着してくると「クリアするよりも目立ちたい」というような挑戦者も増えてきて、たとえば職場の制服で揃えて出場する集団であったり、コスプレなどで目立とうとする人もいた。
なかでも伝説ともいえる挑戦者が「キョンシー」だ。そもそもキョンシーとは、80年代の香港映画『霊幻道士』や台湾映画『幽幻道士』に登場し、当時一世を風靡した妖怪である。全身が硬直しているため、両手を前に出して膝を曲げずにジャンプしながら移動する姿が特徴で、お札をおでこに貼ると封印できる。
そんなキョンシーのコスプレをした挑戦者がお茶の間の視聴者を驚愕させた。ただの“イロモノ”かと思いきや、キョンシーポーズをしたまま「ローラーゲーム」や「ジブラルタル海峡」といった難関を次々にクリア。たけし軍団の面々も舌を巻くほどの運動能力の高さを見せつけた。
筆者もこのキョンシーの活躍にテレビの前で大興奮し、初めて一般人を応援するという経験をした。
だが、残念ながらこの挑戦者・キョンシーは、2回挑戦したものの、両方ともたけし城目前の人喰い穴で敗れてしまう結果となり、まさに運だけで負けてしまった挑戦者の象徴となってしまった。
『風雲!たけし城』は当時多くの子どもたちを夢中にさせ、たった3年間の放送とは思えないほど伝説化した。
ビートたけしさん自らが企画も手がけているが、運動能力だけでなく、運も味方につけなければ攻略できないところもたけしさんらしくて良かった。大人になった今でも脳裏に焼き付いているのは、やはりこれらの秀逸なアトラクションや個性的なキャラクターの数々だろう。
夜の城をバックに番組のメインテーマが流れるエンディングは、美しさすら感じさせてくれたことをはっきりと覚えている。
2023年には、Amazon Prime Videoで令和版『風雲!たけし城』として復活している。ただ、やはり思い出は美化されているからか、子ども時代に見た『たけし城』のインパクトは超えられないとも思ってしまうのである。ちなみに、昭和版も一部の配信サービスで視聴可能なので、未見の人はぜひ観てほしい。