■徐々に過激になっていく主人公の夢実、シャイな性格の成金薫子も…『ルナティック雑技団』
『ルナティック雑技団』は、『りぼん』で岡田さんが最後に手掛けた連載作品だ。
主人公の少女・星野夢実は、家庭の事情により学校の人気者である天湖森夜の家に下宿することになった。憧れの森夜との共同生活に心躍る夢実だが、息子・森夜を溺愛する母・ゆり子や、夢実を好きな学園のアイドル・愛咲ルイにより騒動に巻き込まれていく……。
登場当初、夢実は一途に森夜のことを想い、サポートするような少女だった。しかし過激なキャラたちに感化されてか、その行動は徐々におかしくなっていく。
「第9回 天湖家のある日」にて、風邪で倒れた森夜の母・ゆり子。それをいいことに寝ている森夜に近づき「コラっ 早くおきないとおそっちゃうぞ♡」「ほーら おふとんムイムイしちゃうぞぉ」と、過激な言動を見せる夢実。
さらに夢実は修学旅行中、アクシデントから森夜とキスをするのだが、それがきっかけで担任教師もドキドキしてしまうような妖艶キャラに変貌するシーンもある。夢見がちな性格も相まって、物語が進むにつれて突拍子もない行動を取るようになる夢実の姿も印象的だった。
また本作には夢実のライバルであり、森夜を愛するお嬢様・成金薫子というキャラも登場する。薫子は嫉妬心から夢実にいじわるをするのだが、もともとは森夜を一途に愛するシャイなキャラだ。
しかし夢実と森夜が寄り添うシーンを見てショックのあまり失禁してしまったり、真面目に告白しようとすると執事の黒川に邪魔されたりと、ちょっとかわいそうなキャラでもあった。
それもあってか、本作の番外編では薫子が中心になって物語を展開することも多かった。本作では、可愛らしい夢実と薫子がそれぞれ成長しながらもエキセントリックな行動を取る様子も見どころだったように思う。
岡田あーみんさんの作品3部作において、終始まともなキャラというのはほぼ登場しない。強いて言えば『こいつら100%伝説』のお姫様キャラ・白鳥姫子と『ルナティック雑技団』の薫子に従える青年・茂吉くらいだろうか。
この2人以外にもややまともなキャラはいたものの、登場回数が増えるたびになぜかだんだんと個性的な一面を見せ、そして壊れていく。
岡田さんの作品は真面目なキャラをもおかしくさせてしまう、そんなパワーを持った唯一無二の作品なのである。