『天使なんかじゃない』に『orange』、『俺物語!!』にも登場…少女漫画だからこそジンときた「男同士の友情」名シーンの画像
アニメ『俺物語!!』キービジュアル (c)アルコ・河原和音 / 集英社・「俺物語!!」製作委員会

 多感な少年少女たちの恋愛を描いた少女漫画。ドキドキするような恋のエピソードは、今も昔も幅広い世代の女子を魅了してきた。しかし、時に少女漫画では男同士の友情エピソードが描かれ、ファンを感動させることもある。そこで今回は、少女漫画で描かれた「男子たちの友情エピソード」をご紹介しよう。

■不器用な2人の絆にきゅん!『天使なんかじゃない』須藤晃&瀧川秀一

 1991年から『りぼん』(集英社)で連載された、矢沢あい氏の名作『天使なんかじゃない』は、恋や友情、夢に向かって奮闘する高校生たちの姿が生き生きと描かれた作品である。

 舞台は新設されたばかりの高校・聖学院の生徒会だ。明るく素直な主人公・冴島翠とリーゼントヘアがトレードマークの須藤晃の恋模様だけでなく、クールな美少女・麻宮裕子と作中屈指のイケメン・瀧川秀一の恋の行方など、きゅんきゅんする目が離せない展開が続く。

 『天ない』は少女漫画らしくメインはもちろんラブストーリーなのだが、キャラクターが育む友情エピソードも人気だ。翠と麻宮が親友になっていくエピソードには感動させられたものだが、忘れられないのが晃と瀧川、男同士の友情の一幕だ。

 物語終盤、麻宮と瀧川はようやく両想いとなった。それまで自身の将来の夢のためイギリスへの留学を考えていた麻宮だが、その気持ちを抑えて恋愛や友情を優先し、瀧川と同じ大学を志望する。そんな麻宮の本当の気持ちを知り、本心では離れたくないと思いながらも彼女の夢を応援したい気持ちもあって、瀧川は悩んでいた。

 そんな瀧川に晃は「おまえは…相手の都合なんかかまってらんねぇくらい 伝えたい気持ちねぇのかよ」と、背中を押してあげるのだ。晃もまた苦しい恋を経験したからこそ、この言葉に込められた想いは強かったのだろう。

 相手を思うあまり身動きが取れなくなっていた友人を勇気づけるこのシーン。男同士ならではの清々しさが感じられ、またその後、晃のおかげで瀧川と麻宮が話し合い、未来への結論を出すシーンも素敵だった。

 ちなみに個人的には、晃が瀧川家に居候するシーンも印象深かった。晃の彼女である翠は“男同士で恋愛話をしているのかな”なんて想像していたが、実際のところは対戦ゲームでのバトルに没頭する2人。作中ではあまり描かれなかった彼らの無邪気な一面が見られて、ほっこりしたファンも多いだろう。

■恋のライバルでも関係ない!『orange』成瀬翔&須和弘人

 2012年から『別冊マーガレット』(集英社)、休載後に『月刊アクション』(双葉社)で連載された高野苺氏の『orange』は、10年後の自分から手紙が届くという奇跡のような出来事から物語が始まっていく。

 主人公・高宮菜穂は10年後の自分から受け取った手紙により、自身が恋に落ちた相手である成瀬翔が若くして亡くなってしまうことを知る。

 そして驚くべきことに、手紙は菜穂だけでなく同級生の須和弘人や村坂あずさ、茅野貴子、萩田朔にも届いていた。こうして彼らは10年後の自分たちから託された“翔がいない未来”を変えるため、奔走していくことになる。

 ただの恋愛漫画ではなく、未来の自分から手紙が届くなんてSF風な要素も加わった本作は、どのような結末を迎えるのかと多くのファンを夢中にさせた。

 菜穂と翔の恋の行方も見どころだが、今回注目したいのが須和と翔の友情だ。須和はとても明るい性格で、転校してきた翔ともすぐに打ち解ける。実は菜穂に思いを寄せていた須和だが、菜穂を好きだからこそ彼女が翔に惹かれていることに気づいた。

 恋のライバルが親友という苦しい状況になる須和。しかし、須和は2人がうまくいくようにそっと手助けをする優しい男性だった。そして翔を救うため、菜穂たちと一緒に力を注いでいく。

 作中では高校時代とともに、10年後大人になった彼らの姿も時折描かれている。翔がいない未来ではあるが、須和と菜穂は結婚もして子どももおり、それなりに幸せを掴んでいた。だが、それでも須和は翔がいない未来を変えるため、菜穂たちと一緒に過去の自分に思いを託す。

 未来の自分から手紙を受け取った須和が「俺は絶対菜穂に告白しないって決めてる」と、決意を語るシーンがある。実は彼は翔が亡くなったことで菜穂と添い遂げる決断をしていた。しかし翔のいない未来を変えられることを知った須和は「この世界ではその道は選ばない」と自身の気持ちを押し殺し、菜穂が翔と幸せになることを選んだのだ。

 自分の好きな人と大切な友人の幸せを願う須和の存在が、本作をより感動的な作品へと導いていったのだと思う。

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