■人を救いたい気持ちは一緒!

 理子は天元との同化を使命だと自分に言い聞かせていた。同化すると本人の自我は消えてしまい、親しい友人や家族とは一切会えなくなる。本人はそれを受け入れようと努め気丈に振る舞っていたが、土壇場で怖くなってしまい、普通の人生を送りたくなってしまう。

 そんな理子の選択を、夏油も五条も一切否定しなかった。むしろ、天内の意志を尊重して全力でサポートしようとしている。

 理子を気にかけていた夏油は、彼女に内緒で五条と話し合いをしていた。その際、もし同化を拒んだとしたらどうするか、と夏油が問いかけると、五条が「そん時は同化はなし!!」ときっぱり答えたのだ。さらに、そのせいで天元と戦う羽目になったとしても、「俺達は最強」「私達は最強」だから命を懸けて理子を救う、という心構えもみせた。

 性格はまるで違うがお互い熱い気持ちを持ち、誰かを救うことにかけては意見の一致を見せたふたり。このシーンにはぐっときたが、その後すぐに理子が殺されてしまったのが残念でならない。

■敵対しても失われない関係性

 夏油は呪術師として活動を続けるうち、自分が守ろうとしてきた非術師の醜さを目の当たりにし、絶望する。そんな中「非術師が呪いを生んでいる」という事実を知り、後輩が命を落とし……と悪い要素が次々と重なり、結果として「非術師のいない世界」を作ろうとして五条とは敵対関係になってしまった。

 しかしそんな夏油に対し、五条は恨みや憎しみを持つことはなかった。それは、一歩間違えれば自分がそうなっていたからかもしれないし、夏油が本当はどんな人間かを誰より知っていたからかもしれない。

 やがて時が流れ、呪詛師となった夏油が呪術高専を襲った際には、五条は足止めを食ってしまい学校に向かえず絶体絶命のピンチとなる。しかし、夏油は生徒たちの命を奪いはしなかった。理由もなく若い術師を殺すことはしない主義だったからだ。それについては五条も「そこは信用した」と話している。

 最終的に、乙骨憂太に追い詰められて重傷を負った夏油は、五条に見つかり最期を迎える。自身の手で夏油にとどめを刺す直前、彼に対し何らかの言葉を送った五条。何を言ったのかは明言されていないが、それを聞いた夏油は一瞬ぽかんとした後、「最期くらい呪いの言葉を吐けよ」と屈託のない笑顔を見せている。きっと「敵」ではなく「親友」に送るにふさわしい、祝福のような言葉だったのではないだろうか。

 

 夏油傑は五条悟の唯一の理解者であり親友だ。しかし、純粋すぎるあまり闇堕ちしてしまった……。もし、彼の闇堕ちを阻止できる未来があったとしたら、成長した五条と夏油が協力して宿儺と戦う場面もあったかもしれない。それはそれで見てみたかった。

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