■「オールスターズ」でも存在感が光るキュアマリン

 さて、キュアマリンの存在感は『ハートキャッチ』の中だけにとどまらない。『プリキュア』シリーズでは2009年から2016年まで「オールスターズ」と名のつく、歴代のプリキュアが全員登場するお祭り的な映画を毎年春に上映していた。基本的にはその年と前年のプリキュアがメインとなり、プリキュアの人数が多くなる分、一人当たりの登場シーンやセリフが少なくなりがちなのは仕方のないことだが、キュアマリンは主人公格のピンク色プリキュアと同等にセリフがあることも少なくない。

 極めつけは、『ドキドキ!プリキュア』と『スマイルプリキュア!』がメインとなる2013年公開の『映画プリキュアオールスターズ NewStage2 こころのともだち』のビジュアル。集合し全員が左を向く横顔の中、1人だけカメラ目線でこっちを向いているのだ。このほかにも「オールスターズ」の映画で一人だけ着地に失敗し海に落ちたり、一人だけ、どアップで画面に映し出されたりと、その扱いはどこか他のキャラクターに比べて別格である。

 その人気の高さは数にも現れている。2019年にNHKで発表されたアンケート企画『全プリキュア大投票』では、プリキュア部門の人気投票で1位のキュアブラック、2位のキュアホワイトという初代主人公に次いでキュアマリンが3位を獲得。4位が『Yes! プリキュア5』の主人公・キュアドリームだったことから考えても、かなりの結果であることは明白だ。

 しかしそんな彼女にもコンプレックスがある。姉は高校生の現役人気モデルで、母親はファッションショップのオーナー、父親はカメラマンと、彼女はファッション一家に生まれている。人気モデルの姉と自分を比べ、姉のようになれなかったことを人知れず悩んでおり、アニメの1話ではその心の弱さにつけ込まれてデザトリアン(作中に登場する敵)にされてしまう。物語が進むにつれ、そのコンプレックスを乗り越えて、自分の本当に好きなことに対してまっすぐ突き進む彼女の姿に勇気をもらえたという人も少なくないだろう。

 放送から15年経っても色あせないキュアマリンの魅力。以降プリキュアも大幅に増えたが、個性的なプリキュアが増えても、ファンからも製作陣からも愛されるキュアマリンはいつまでも独自の地位で輝いている。

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