■主人公機なのに「完全な失敗作?」
長谷川裕一氏が描くコミック『機動戦士クロスボーン・ガンダム ゴースト』(KADOKAWA)の主人公「フォント・ボー」が搭乗したのが、可変モビルスーツ「ファントムガンダム」だ。
このファントムは、コミック巻末の機体解説に「本来の狙いから考えると完全な失敗作といってよい」と酷評された主人公機である。
ファントムには、V2ガンダムに搭載されたことでもおなじみの「ミノフスキー・ドライブ」という新システムが組み込まれている。
しかし、ファントムに搭載されたミノフスキー・ドライブは完全なものではなかった。V2ガンダムは20Gに及ぶ加速にもパイロットが耐えられるよう、慣性を緩和する機能を備えている。だがファントムでは、その緩和機能は稼働せず、パイロットはファントムの加速Gをまともに受けることになる。
そのため初戦でフォントはファントムの加速性能の洗礼を受け、嘔吐するシーンもあった。
さらにファントムの真骨頂である巡航形態に変形し、核ミサイルを迎撃した際は800秒近くも5Gを受け続け、フォントは3日間も意識を失っている。
ほかにも、ファントムのミノフスキー・ドライブによる莫大なエネルギー消費は、排熱という問題を生み、そのせいで稼働時間が短くなるという弱点も抱える。本来のコンセプトが「惑星間高速移動」だっただけに、それが実現できない以上「失敗作」といわれてしまうのも仕方がないのかもしれない。
ガンダムシリーズでは機動性を追求するあまり、肝心のパイロットの身体に危険を及ぼした機体も少なくない。しかし、そういった失敗を糧にして改良を重ねることで、新たな技術が生まれてくるのだろう。