ユニオンフラッグカスタムにギャプランも危険…? ガンダム作品に登場する「殺人的な加速能力」をもつ問題機たちの画像
「HG 1/144 グラハム専用ユニオンフラッグカスタム」(BANDAI SPIRITS) (C)創通・サンライズ

 車が急加速するとき、シートに体が押しつけられるような感覚を味わったことはないだろうか。その力は「加速G」などと呼ばれている。

 高速移動する物体には大きなGが搭乗者にかかり、急激に高いGが発生すると脳に血液が供給できず、視野を失う「ブラックアウト」と呼ばれる症状を引き起こす。そのまま高Gの環境に居続けると、脳虚血を起こして失神することもありうるのだ。

 ガンダムの世界にも、当然ながら加速Gは存在する。機体自体がGに耐えきれずに空中分解してしまったモビルスーツ「ヅダ」の事故や、『新機動戦記ガンダムW』に登場した「ゼクス・マーキス」が「トールギス」に初搭乗した際の「殺人的な加速だ!」といったセリフなども有名だろう。

『ガンダム』の世界の機体が生み出す加速Gは、現代の戦闘機どころではない。そこで今回は、文字通り「殺人的な加速能力」を誇った特徴的な機体を振り返っていこう。

※本記事には各作品の内容を含みます。

■「阿修羅すら凌駕する存在」が起こしたジャイアント・キリング

 アニメ『機動戦士ガンダム00』に登場する「グラハム・エーカー」の専用機「ユニオンフラッグカスタム」。従来の量産機を大出力化させて機動力を高めた機体で、作中で無敵を誇った「ガンダム」に一矢報いたモビルスーツだ。

 グラハムは、ガンダムの高機動に対抗すべく耐Gリミッターの解除を行うなど、パイロットへの負担を無視したカスタム機で極限まで機動性を追求した。

 恩師や部下を失った復讐に燃えるグラハムは、同機で「ガンダムスローネアイン」に戦いを挑む。フラッグの武装では有効打を与えられないことを知っていたグラハムは、機体の加速性能を最大にして突撃。スローネアインのビームサーベルを弾き飛ばして奪うと、スローネアインの腕を切り落とすことに成功した。

 このときのグラハムが言い放った「どれほどの性能差であろうと、今日の私は阿修羅すら凌駕する存在だ!」の名ゼリフが忘れられない。

 ガンダムを撤退に追いやったが追撃までは叶わず、グラハムはその場で吐血してしまう。グラハムは「この程度のGに体が耐えられんとは……」と悔しがっていた。

 『ガンダム・モビルスーツ・バイブル 105号』(ディアゴスティーニ)によると、同機の全速旋回時のパイロットへの負担は12Gとされている。命を落とす危険があるほどの強烈なGにさらされながら、ガンダムに一矢報いたグラハムの執念を感じたシーンである。

■耐G強化を施した強化人間専用機

 アニメ『機動戦士Zガンダム』に登場する可変モビルアーマー「ギャプラン」は、強化人間「ロザミア・バダム」の乗機として主人公「カミーユ・ビダン」を苦しめた。しかし、同機体はあまりにも高い加速性能ゆえに、耐G仕様に改造を施された強化人間にしかまともに扱えない機体だった。

 同時期に運用された可変モビルアーマー「アッシマー」と違い、ギャプランは空力的に有利なリフティングボディや熱核ジェットをもたない。熱核スラスターの大推力によって、力技で高速飛行を実現している。そのため燃費の悪さや航続距離が短いという欠点もあった。

 その欠点を補うためのオプション・ブースターを装備することでギャプランに対応可能な場面も増えたが、追加装備ありきで、強化人間にしか耐えられない殺人加速の機体である。総じて扱いにくい機体だったのはいうまでもない。

 なお、パイロットにかかるギャプランのGの問題は後ほど改良が施され、一般兵も搭乗可能となった。強化人間ではない「ヤザン・ゲーブル」が搭乗していたギャプランは改良後の機体かと思われるが、ヤザンであれば生身で殺人加速に耐えられそうな気がしなくもない。

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