■黒王号は空も飛べる!? 恐るべき驚異の戦闘能力

 黒王号の凄さは、なんといってもその物凄い戦闘能力にある。まずはザコたちを歩くだけで踏み殺してしまうパワーだ。

 コミックス12巻「忠誠の代償!の巻」にて、黒王号に乗ったラオウが久々に自分の城に戻ってくる。それを知らないザコたちは好き放題やっており、それに憤怒したであろうラオウの考えを感じてか、黒王号は慌ててひれ伏すザコたちを圧倒的なパワーで次々に踏みつぶしていくのだった。

 さらにラオウとケンシロウの最初の戦いでは、ラオウを乗せた黒王号が空を飛んでいる描写もある。レイの敵を取るべくラオウに戦いを挑んだケンシロウ、そこで気を高めた両者はいつの間にか空中に飛び上がっており、黒王号はラオウを背に乗せたまま空中戦を繰り広げている。

 このほかにもユリアを迎えにラオウと黒王号が南斗の都へ向かう際には、黒王号が南斗の兵団に飛び掛かり、屈強な男らを蹴散らして瞬殺。黒王号は、主のためだったらまさに恐ろしい戦闘兵器にもなる動物なのだ。

■やるべきことは終えた…黒王号の最期とは

 まさに馬界の暴君ともいえる黒王号だが、その最期は穏やかだった。

 ラオウの死後、黒王号はケンシロウとユリアとともに海をわたる。そしてユリアが亡くなったあと、黒王号はケンシロウとともに再び混迷の時代に立ち向う。最後は嵐のなかケンシロウを乗せて歩き続けるものの、途中で立ち止まり、目を閉じたままその生涯を終えるのであった。

 恐ろしいイメージのある黒王号だが、主にはとても従順だった。ラオウがケンシロウとの戦いで傷を負い、部下たちはみな去っていくシーンでも、黒王号はラオウの傷を舐め、一頭だけでラオウを支えていた。

 またストーリー終盤ではそのラオウの忘れ形見である息子・リュウも乗せ、自分の背中を通して父親であるラオウの様子を伝えているような姿も垣間見えた。

 それを思うと黒王号は決して恐ろしいだけの馬ではなく、自分が信じた主人には従順で、芯のある性格だったといえるだろう。

 

 黒王号は作画・原氏の凄まじい画力もあり、とにかく迫力があって恐ろしい馬というイメージが強かった。しかし登場シーンをよく振り返ってみると、ラオウやケンシロウとは強い絆で結ばれており、主のためなら命を投げ出すようなシーンも少なくない。

 実際に黒王号のような馬は存在しない。だが、黒王号は単なる漫画のキャラクターにとどまらず、さまざまな形で読者に影響を与えた存在と言えるだろう。

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