範馬勇次郎に花山薫、烈海王も…初期と変わりすぎ? 『刃牙』シリーズに登場する「すっかり丸くなったグラップラー」たちの画像
少年チャンピオン・コミックス『範馬刃牙』第31巻(秋田書店)

 10年、20年を超える漫画の長期連載では、さまざまな変化が付き物だ。目立つのが絵柄の変化だが、それ以外にも「あれ? 初期とだいぶ変わったな」と読者が感じる要素も多い。

 たとえば、今年連載34周年を迎える格闘漫画の大作『刃牙』シリーズ(板垣恵介氏)では、初期から性格が大きく変わったキャラが目立つ。最初は格闘家らしく獰猛で尖っていたグラップラーが、いつの間にか大人しくなっていたりするのだ。

 そこで今回は「刃牙」シリーズで登場時から比べて性格が「丸くなった」グラップラーを見ていきたい。

 

※本記事には各作品の内容を含みます

 

■地上最強が通り魔みたいなことを…範馬勇次郎

 まずは、本作のトップファイター“地上最強の生物”と謳われる範馬勇次郎だ。主人公・範馬刃牙の父親にして目標でもある男だが、登場したばかりの頃はまるでお腹を空かせたヒグマのように狂暴なキャラだった。

 印象的なのが、シリーズ第1作『グラップラー刃牙』第45、46話でのボクシングジム襲撃だ。刃牙をして“一日でも人を殺傷せずにはいられない”と語られる殺傷本能を持つ勇次郎は、通りがかったボクシングジムに乗り込む。そして、その場にいたボクサーたちに無理やり喧嘩を売り、地上最強の腕力でひとり残らずねじ伏せるのだ。考えてみると完全に犯罪なのだが、それを咎められる人は誰もいない。

 ほかにも、刃牙が仲良くなった野生動物・夜叉猿を殺して死骸を刃牙に見せつけたり、地下闘技場最大トーナメントに乱入したり『グラップラー刃牙』時代の勇次郎はやりたい放題だった。

 だが、シリーズ2作目『バキ』以降は徐々に丸くなっていった勇次郎。『刃牙道』第17話では、通行人にサインをせがまれ、渋々「指でサイン色紙を十字に引き裂く」ファンサービスで対応していたりもする。将来有望なボクサーを潰していた頃と比べると優しすぎる。そう言うと勇次郎は怒るだろうが……。

■プロボクサーの腕を破壊して再起不能に! 花山薫

 次は、規格外の握力と漢気で戦う喧嘩師・花山薫だ。近年では、歳が近い刃牙と良い友人として付き合っていたり、スピンオフ作品『バキ外伝 創面』で高校生としてユーモラスな生活を送っていたり、裏社会の人間とは思えない可愛さをよく見せている。

 だが『グラップラー刃牙』で登場した頃の花山はとにかく恐ろしかった。第108話では、かつて刃牙を翻弄したプロボクサーのユリー・チャコフスキーを、なんと試合直前に襲撃。自分が戦いたがっている刃牙が次の相手をユリーと決めていたため、ユリーを排除すれば自分が刃牙と戦えると考えてのことだ。

 試合前のボクサーを襲うだけでも凄まじい暴挙だが、若干15歳で花山組の二代目組長となり、日本一の喧嘩師に登り詰めた花山はそれだけでは終わらない。相手の腕を握りつぶして血管を破裂させる“握撃”でユリーの左腕を破壊すると、その口内にゲンコツをねじ込んで歯を根こそぎ砕き折る。

 結果、ユリーはボクサー生命が潰えるほどの重傷を負い、悲願であったヘヴィ級制覇の夢を断たれてしまうのだ。

 自分の欲望のためにひとりのボクサーを引退させるまで痛めつけるのが、初期の花山薫である。あんなに恐ろしかった花山が今や愛嬌のあるキャラになっているとは……長期連載の凄みを感じてしまう。

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