■バケモノだったのはガンダムではない?
それでもシャア・アズナブルやアナベル・ガトーなど、名だたるパイロットが一年戦争時にゲルググに乗っていたのも事実。とくにシャアは、ゲルググでアムロのガンダムと直接交戦している。シャアほどの実力者であれば、初期型とはいえスペック面で勝るゲルググでガンダムに勝てたのではないだろうか。
おそらく、その答えは半分イエスで、半分ノーだろう。ガンダムに乗っていたのがアムロではない連邦の熟練パイロットであれば、ゲルググを駆るシャアの敵ではなかったはずだ。
つまり、シャアのゲルググが圧倒されたのはガンダムが優れていたというより、最終局面でのアムロが凄すぎたといったほうが正しそうだ。ニュータイプとしての素養を覚醒させ、機体の反応速度すら超越していた当時のアムロの強さは、まさにバケモノじみていた。
いくらシャアの技量が高いとはいえ、そんなアムロを相手にするのに、わずかに性能が勝る程度のアドバンテージでは埋められない差があったのだろう。
そして、視聴者の目線から見えるのはガンダム(アムロ)の活躍が中心だったので、相対的にゲルググが弱く見えたとしても仕方がないとも思う。
ゲルググは、間違いなくジオン軍が誇る傑作機だった。そのことは、ゲルググをベースにしたバリエーションの豊富さや後継モビルスーツの存在が証明している。それこそ十数年後の『機動戦士ガンダムUC』の時代でも使用されていたほどだ。
国力で劣るジオン公国軍が、地球連邦軍に対抗しえたのはモビルスーツという革新的な兵器のおかげである。その後、連邦もモビルスーツを開発し、長期戦に突入してしまったら国力の差が響いてくるのは当然のこと。もはや戦争の趨勢は揺るがなかったにせよ、ゲルググという優秀な機体の大量投入がもう少し早く叶っていたら、戦局は大きく変わっていたかもしれない。