
テレビアニメ『機動戦士ガンダム』で描かれた一年戦争末期、「ザクII」に続く次世代の量産型モビルスーツ(MS)として「ゲルググ」が登場。ジオン公国軍の大きな力となった……と思いきや、実はゲルググはその高性能を十分に発揮できなかったとされている。
カタログスペック上は、ガンダムすら上回る高性能機であり、戦場に大量投入されながら、なぜジオンの巻き返しはならなかったのか。そのあたりの理由を、ゲルググという機体を振り返りながら掘り下げてみたい。
※本記事にはテレビアニメ『機動戦士ガンダム』の内容を含みます。
■性能面では「ガンダム」を凌駕…!?
『ガンダム』関連の書籍などで公開されている機体データを見ると、ゲルググの性能は確実にガンダムの数値を上回っている。このデータを正義とするならば、ゲルググを大量生産できたジオン軍があっさり敗れるのは信じられないことだ。
実際に出力、推力、センサー有効半径はガンダムよりゲルググのほうが優秀で、ゲルググのシールドには耐ビームコーティングまで施されている。
さらにゲルググは生産性の面でも優れている。地球連邦軍はガンダムをそのまま量産することはできず、装甲材質や武装などのコストダウンを図った「ジム」を量産した。
一方、ゲルググはザクの生産ラインを転用することで大量生産を実現。実際ジオン軍は700機以上のゲルググを生産したとされている。ガンダム以上の性能を誇り、ビーム兵器を標準装備するゲルググの大量生産に成功し、大きな戦力となるはずだった。
■深刻なパイロット不足が足かせに……
そんな高性能なゲルググが、なぜ情勢を変えられなかったのか。それはジオン軍の深刻なパイロット不足にあった。一年戦争の戦いの舞台が宇宙に移って以降、劣勢を強いられたジオン軍は多くの優秀なパイロットを失った。
ゲルググが戦場に大量投入されたア・バオア・クーの攻防戦の頃には熟練パイロットは少なく、劇中でも学徒動員された兵について語られるシーンが描かれている。
最低限の訓練を受けただけの学徒兵に、ゲルググのような高性能機を与えたところでまともに扱えるはずもない。むしろ、そのような状況で最終決戦に駆り出された若者たちが不憫でならない。
また、生き残っていた数少ない熟練パイロットも機体の習熟に要する時間が足りず、新型のゲルググではなく、慣れ親しんだザクIIやリック・ドムなどで出撃したといわれている。ゲルググの大量生産が遅すぎた面は否めない。