「すまんが、みんなの命をくれ」。この台詞は劇場版『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』にて、ラー・カイラム艦長のブライト・ノアが、最終決戦前に部下に対して発した言葉だ。
これは決してブライトの傲慢な台詞などではない。小惑星・アクシズが地球に落下するのを阻止するというあまりに過酷な作戦に対し、その命を賭してほしいという願いや艦長としての責任などの、さまざまな想いが込められた名台詞なのである。
『ガンダム』シリーズには数多くの名台詞が存在するが、ブライトのような上官キャラが戦時中の過酷な状況で発する言葉には深く重い意味が込められており、心震わされてしまう。
今回は、そんな『ガンダム』シリーズにおける上官キャラたちの名台詞を、厳選して振り返っていこう。
※本記事には各作品の内容を含みます
■“失敗は成功のもと”を体現することが大人の生き方
まずは『機動戦士ガンダムUC』より、“赤い彗星”シャア・アズナブルの再来と呼ばれるフル・フロンタルが、部下のスベロア・ジンネマンにかけた台詞から。
開放されれば地球連邦政府が転覆するとされる「ラプラスの箱」。その受領と、ネオ・ジオン残党の筆頭たるミネバ・ラオ・ザビの護衛に失敗したジンネマンらガランシェール隊は、フロンタルの親衛隊長であるアンジェロ・ザウパーから強く叱責される。
そこへ割り込んできたフロンタルに次なる任務を与えられると、ジンネマンは「この失態、一命にかけて償う所存であります」と、深い反省と挽回の意思を示す。そんなジンネマンに対しフロンタルは「過ちを気に病むことはない。ただ認めて、次の糧にすればいい。それが、大人の特権だ」と言葉をかけるのだ。
仮にも世界を揺るがしかねない重要任務を全うできなかったジンネマンに対し、このような言葉をかけてあげられるフロンタルの度量の大きさには圧倒されてしまう。
自身が重大な損失を伴う失敗をしてしまった時に上司から同様の言葉をかけられたなら、思わず一人涙してしまうかもしれない。
■若者の死から新たな時代は生まれない…
『機動戦士Zガンダム』では、シャアが名を変えた姿であるクワトロ・バジーナが名台詞を残している。
最終話「宇宙を駆ける」にて、グリプス2内からの脱出を図るカミーユ・ビダン、ファ・ユイリィ、クワトロの3人。パプテマス・シロッコとハマーン・カーンの追撃に対して、カミーユは足止めとして1人での応戦を試みる。
ともに脱出するよう促すクワトロに、“自身の犠牲をもってクワトロが世界を救済することを信じている”と伝えるカミーユに対し、クワトロは「君のような若者が命を落として、それで世界が救えると思っているのか」「新しい時代を作るのは老人ではない!」と力強く伝えるのである。
命の重さは誰しも平等なれど、未来の世界で営みの中心にいるのは今の子どもたち、つまり若者である。若者の命に代えて救われる世界などないというこのクワトロの名台詞は、現代を生きる我々にとっても、ハッとさせられる言葉なのではないだろうか。