■セルの気配だけで絶望してしまった神様

 神様も強大な存在を前に恐怖におののいてしまった場面がある。それが下界のようすをうかがっていた時のことだ。ピッコロに「また下界をのぞきみか?」と問われているあたり、どうやらこののぞき見は日課のようである。「あまりいい趣味とはいえんな」とも言われてしまっているが……。

 神様は4年前から妙な胸騒ぎを感じており、警戒の意味もあって外界をのぞいていたという。その原因となる存在がセルであるのは後にわかるが、その時点では「とてつもない生物がこの地球のどこかに存在する」という情報しか判明していない。

 とてつもない生物=セルがいずれ地球を脅かすことになり、その勢いは誰にも止められない――神様はそんな未来を予見したからこそ震え上がった。「絶望的な予感がする」という言葉からも彼が感じる恐怖が伝わってくる。

 しかもこの時にはまだ、セルの姿は一切描かれていない。そのため、どのような存在なのかさっぱりわからず、だからこそ読者も想像力を掻き立てられた。ただでさえ17号たち人造人間が手に負えないという状況で、それを上回る強さの新しい敵キャラが登場したのだから驚きだ。

 そして、神様の予感は見事に的中し、セルは後に圧倒的な力を手に入れて悟空たちを苦しめていく……。

 

 『ドラゴンボール』では、強キャラでも震えるほどの恐怖を感じる描写がたびたび出てくる。しかし思い返してみれば、悟空を見るとそんな素振りは無いような気がする……。

 以前ナメック星に向かう際に、悟空はメチャクチャな重力による修行のせいで恐怖を感じなくなったのかもしれないと話しているので、それもひとつの原因かもしれない。

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