鳥山明さんによる『ドラゴンボール』(集英社)は、完結から長い時が経った今でも世界中に熱狂的なファンが存在する人気作だ。それは、どれだけ経とうと色褪せない数多くの魅力があるからこそだろう。
本作は、ストーリーが進むにつれてキャラがどんどん強くなり、もうこれ以上の強キャラは現れないのでは?と毎回思わされるほどの展開になっていく。
しかし、そんなキャラたちを平然と上回る強さを持つ新キャラが次々と登場。そして過去の強キャラの中には、新たに登場する強キャラの未知数の強さを演出するため、踏み台にされてしまう者も……。
そこで今回は、強キャラが自分を上回る敵を前に恐怖に震え、読者をビビらせたシーンを紹介したい。
■ベジータ、初めての涙
ベジータはプライドが高く、自分の強さが絶対だと信じて疑わないキャラだ。そんな中でも彼が敵わないと思っていたであろう存在がフリーザである。当初はフリーザを「フリーザさま」と呼んでいたあたりからもそれはうかがえる。
しかし同時に、いずれはフリーザを超えるという野心を抱いてもいた。これはひとえにフリーザの変身能力について知らなかったからだろう……。
ベジータはナメック星に着いてから、格上相手との戦闘ばかりだった。自身のパワーアップを確信して挑むも、変身して真の実力を発揮したザーボン、必殺技をいくつも使いこなすリクームにボコボコにされてしまう。それでも心が完全に折れるまでは行かず、立ち向かおうとする勇気がまだあった。
しかしそんなベジータの心をあっさりと折ってしまったのが、最終形態のフリーザである。ベジータは瀕死の状態から復活して戦闘力を上げ、フリーザに勝てると確信していた。だが……フリーザの戦闘力はあまりにも次元が違いすぎた。
ベジータは手合わせをして早々に力の差を感じてしまったのか、正真正銘フルパワーで渾身の気功波の一撃を放つ。その戦い方には、自身の力不足を受け入れきれず「どうにでもなれ」というような、自暴自棄な気持ちも感じられた。
おまけに、そんな気功波もあっさりと蹴り飛ばされる結果に。これでベジータの心は完全に折れてしまい、生まれて初めてガタガタ震えあがりながら悔し涙を流す……。
まさか、あのベジータがこのような状態になるとは誰も予想できなかっただろう。それと同時にフリーザがあまりにも強すぎて、恐怖のため身動きがとれなくなった悟飯たちと同じように引いてしまった。
このシーンでは、いくら努力しても無駄なこともあるのだとフリーザによって初めて感じさせられた。改めて恐ろしい敵キャラである……。
■予想外の強さに驚愕したトランクス
未来から来たトランクスが敵との実力差に驚かされるシーンもある。それが別の未来で生まれた人造人間17号や18号との出会いだ。
未来トランクスといえば、超サイヤ人になってフリーザ親子をいとも簡単に葬り去ってしまうほどの実力者である。そして、それまで自分のいた世界で17号や18号と何度か戦いを繰り返してもいた。
そのときのトランクスはふたりを相手に、超サイヤ人になってどうにか戦えるといった状態で、あと一歩及ばないくらいの実力差だったようだ。そうなると、修行や努力次第で今後どうにでもなるようにも思えた。
しかし、別の世界線(原作の世界線)で生まれた17号たちの強さを目の当たりにしたトランクスは驚愕する。超サイヤ人になったベジータが軽くあしらわれ、自ら参戦しても全く歯が立たなかったのだ。
そんなトランクスの予想を上回ってしまった17号たちの強さを目の当たりにして、読者も「一体彼らをどうやって倒すの?」と思ったはずである。悟空たちが苦労してようやくなれた超サイヤ人が、あっさりとやられてしまったからだ。
しかも未来トランクスが存在を知らないと話す16号や、セルといった謎の生命体の登場。これによって、どのような展開になるのか予測不能となったのも恐ろしかった。