任天堂『ファイアーエムブレム』シリーズの第1作『ファイアーエムブレム 暗黒竜と光の剣』がファミコンで発売されて2025年4月で35周年を迎える。シミュレーションRPGというジャンルの草分け的存在であった同シリーズは、2023年には新作『ファイアーエムブレム エンゲージ』が発売されるなど、これまで複数のタイトルが発売されており、いまだ根強い人気を誇っているシリーズである。
そんな中、1999年にスーパーファミコンで発売されたのが『ファイアーエムブレム トラキア776』だ。本作は、人気となった前作『ファイアーエムブレム 聖戦の系譜』(1996年)のサイドストーリー的な物語であり、リーフやフィンなどの人気キャラが再登場するため、ファンも多い。
この作品はスーパーファミコンの書き換えシステム「ニンテンドウパワー」で発売されたソフト。翌年にはROMカセット版も発売されたが、スーパーファミコン末期の作品のため、現在ソフトはプレミア化しており、プレイしたことのない人も多いかもしれない。
ただ、難度の高さに定評がある本シリーズにあって、本作は屈指の高難度で知られており、事前情報なしでのクリアは困難を極める。今回は、この作品がいかに難しかったかについて振り返っていきたい。
■捕らえて武器を奪う、疲労度、99%の命中率など戦略性に慎重さが求められるシステム
『ファイアーエムブレム』シリーズは、戦略的要素とキャラを育てるRPGの要素とが混ざった作品であり、複数のキャラを育成しながらマップクリアを進めていく。そして重要なのは、敵に倒されてしまったキャラは復活することがないということだ。復活させるアイテムも存在するが、希少価値が高いため、基本的にキャラがやられないように進めていくことになる。
犠牲を厭わなければ『ファイアーエムブレム』シリーズのクリアは難しくない。ただ、主力で育成しているキャラがやられてしまうとどうしてもリセットボタンを押したくなってしまう。
しかもこれまでの作品に慣れているプレイヤーであればあるほど、キャラを全員生存させたいのだ。その理由として、特定のキャラがいないと仲間にならないキャラがいたり、手に入らないアイテムがあったり、またエンディングで語られるエピローグが死んだキャラだけ見られなかったりといったことがあるからだ。
と、ただでさえ難しい『ファイアーエムブレム』なのだが、『トラキア』はさらに難しい。
まず、独自のシステムとして、お金が簡単に手に入れられないことが挙げられる。それまでのシリーズでは特定の敵を倒したり村を尋ねたりすることでお金が得られたが、同作では「敵を捕まえて持っている武器や道具を奪ってそれを売る」しか方法がない。これまで倒すだけでよかった敵から「武器を奪う」という余計なミッションまで発生することになる。
また、各キャラに疲労度が設定されており、疲労度が一定程度貯まるとそのマップで出撃できなくなってしまうのも特徴。それにより余分なキャラまで主力級に育成しなければならなかったりと、疲労度を調整していかなければならない。
加えて、前作までは攻撃の命中率が最大100%だったのが、同作では99%が最大となっている。たかが1%というなかれ。この「1%」が非常に曲者であり、1%の確率で当たったり当たらなかったりすることで、戦局が大きく変わってしまうことがあるというのは、シリーズをプレイした人ならわかるだろう。
■次々と迫る高難易度マップ
しかも同作は、ほとんどが難関マップといっていいぐらい難しいマップが続く。
その理由として、前作までは「敵の拠点を制圧」がクリア条件だったものが、同作では、「指定の場所から離脱する」や「指定のターンの間、敵の猛攻を耐えきる」といったクリア条件が課されているマップが加わったことも挙げられる。
たとえば第5章「母と娘」、第6章「脱出」は指定の場所から離脱するマップが連続するが、5章では捕らえられている仲間のナンナとエーヴェルを救出しなければならない。そこにいる敵キャラはマーシナリー、ジェネラル、ウォーリアといった上級クラスであり、まともに戦うとやられてしまう。そのため、必死で耐えつつ、助けを待つことになるが、かなり運要素が絡むため非常に難しい。
6章では、途中にある民家を訪れると貴重なアイテムが手に入ったり、仲間が加わったりするので、それを無視するとどうしても進軍が遅れる。それに加え、敵の援軍に超強力なキャラクターのガルザスが現れる。このキャラは終盤で仲間になるが、ここでは仲間にならず、しかもまだ序盤の第6章では到底勝ち目のない相手だ。そんな敵が追ってくるため、ゆっくり進軍することもできない。
さらに第14章「総攻撃」は、その名のとおり圧倒的多数の敵に囲まれ、10ターン耐えきらなければならないマップ。耐えきるだけならなんとかなるが、攻めてくる敵軍をかいくぐった先にある民家で貴重なアイテムが手に入ったり、特定のキャラで民家を訪れないと仲間にならないキャラがいたりする。逆に「10ターンしかない」と思わせるほど、あわただしい攻略を強いられるマップとなっているのだ。
このようなマップが序盤から続くのだから難関ゲームと言われるのも納得だろう。