2024年12月20日に公開された、アニメ『忍たま乱太郎』の映画『劇場版 忍たま乱太郎 ドクタケ忍者隊最強の軍師』が好調だ。興行収入は2025年1月14日時点で13億円を突破している。
今回の映画は、2013年の小説『小説 落第忍者乱太郎 ドクタケ忍者隊 最強の軍師』を原作として映像化されたもの。2011年公開の『劇場版アニメ 忍たま乱太郎 忍術学園 全員出動!の段』以来、約13年ぶりとなる劇場版のアニメだ。
あらすじは、タソガレドキ忍者・諸泉尊奈門との決闘に向かった後、土井先生が消息を絶ってしまう。忍術学園では山田先生と6年生たちによる捜索が行われるが、そこで土井先生そっくりのドクタケ忍者隊の冷徹な軍師・天鬼と出会うというストーリーだ。
同作を子ども向けアニメと侮るなかれ。連日若い女性を中心に盛り上がっており、劇場が満員になることも少なくない。ストーリーも、「むしろ大人向けでは?」と感じる表現が少なくなかった。
それもそのはず、『忍たま乱太郎』は室町時代末期を舞台にした作品であり、忍者とは常に死が隣り合わせであるもの。子ども向け作品かつギャグ漫画のため直接的な描写は少ないが、随所に闇を感じるシーンが存在しているのだ。
たとえば、今回の劇場版では主人公・猪名寺乱太郎の親友のきり丸の出自について、少し触れられていることが場面カット公開とともに話題となったが、彼には苗字がないことが原作第12巻の質問コーナーで判明している。
村を焼かれ、家族も失った彼は「摂津(地方出身)のきり丸」と名乗っているが姓はなく、戦災孤児であることから、原作第14巻ではある村にあった堀を見て、“ああいう堀があったら自分の村も焼かれずにすんだろうに”といった、悲しい過去を思わせるセリフを呟いている。
『忍たま』では、明るさの裏で後ろ暗い過去を持つキャラが多いのだ。そこで今回は、『忍たま』に登場する、作品としては意外な「闇深キャラ」を振り返りたい。
まず、今回の映画の主人公ともいえる土井先生こと土井半助。きり丸の出自に対して、自分も「同じ様な育ち方してるからかな」と語る彼は、原作第50巻で、もともとは権力者の生まれだったが、子ども時代に家を襲撃されて失っていたことが明かされている。
土井先生は、長期休暇時には帰る家がないきり丸を家に居候させている。彼は実はかつて抜け忍であり、2024年12月に放送されたエピソード「若い人の段」では半助という名前も偽名で、山田先生が名付けたものであることが明かされ、視聴者の間で話題となった。
続いては、最新映画にも登場する全身包帯巻きの最強キャラ・雑渡昆奈門(ざっとこんなもん)だ。
雑渡はタソガレドキという戦好きの領地の忍軍の組頭で、顔から全身にかけて包帯を巻いた異様な姿をしている。義理堅く部下のことを大切に思う性格で、包帯の下にある全身の大火傷は部下である諸泉尊奈門が10歳だったとき、敵陣で火災に巻き込まれた彼の父を助け出した際にできたものだ。
雑渡には女の子のように足を揃えて横座りする癖があり、本人はこの姿が一番楽だと言っているが、これも実は大火傷で皮膚がひきつれているために正座などが難しいことが小説『ドクタケ忍者隊 最強の軍師』でも語られている。ちなみに、父である先代の組頭も部下のことかばって戦死している。作中では最強キャラのような扱いを受けているが、優しいがゆえの危うさを感じ、その生き方にハラハラしてしまう。