■宇宙人や怪獣はそっちのけ! ウルトラ族の抗争劇
ウルトラ族を宇宙の平和を乱す好戦的な種族だとデマを飛ばしたスペースサタンキングが全宇宙連合軍を組織。ウルトラの国に総攻撃をかけて壊滅状態に追い込み、宇宙に逃れたウルトラ一族を指名手配して、「恐怖のウルトラ狩り」を行う長編「ウルトラ兄弟物語編」も壮絶さでは負けていない。
だが、『ウルトラ兄弟物語』の真骨頂は、やはりウルトラ族同士の集団抗争劇だ。「ウルトラ大戦争編」では、宇宙人や怪獣そっちのけの戦いが繰り広げられた。
ウルトラの国が何者かによる攻撃を受け、ウルトラの父率いる「ウルトラ一千人軍団」が出撃。「宇宙正義軍」を名乗る軍団と交戦する。
宇宙正義軍の正体は、ウルトラの父やウルトラ兄弟と形はまったく同じだが、見た目が真っ黒の戦士たちだった。彼らの祖先はウルトラの国があるM78星と双子星のW87星で暮らしていたが、やがて両者は対立し、W87星は敗れて種族もろとも追放されてしまった。そのためW87星人たちはウルトラ族に復讐の機会をうかがっていたのだ。
事情を聞いたウルトラの父は即座に「プラズマ超破壊砲」の発射を命じるが、これは作動不能に終わる。「ウルトラ一族の大反乱編」で様子ばかり見ていて戦禍を広げてしまったウルトラの父だが、その反省が活かされたようだ。敵の巨大戦艦に乗り込んだウルトラ一千人軍団は、「ウルトラピラミッド(いわゆる組体操のピラミッドの巨大版)」から「グレートM87光線」を発射して敵を蹴散らし、あらためてプラズマ超破壊砲を発射してW87星人を全滅させることに成功した。
爽快だが、ほんのちょっとだけ恐ろしさを感じさせるエンディングだった。
そのほかにも血気盛んだった若き日のウルトラセブンを描いた「ウルトラセブン物語編」、セブンと少年時代のウルトラマンタロウを描いた「セブンとタロウ編」、地球を舞台に主人公の矢的猛先生がきちんと出てくる正調コミカライズの「ウルトラマン80編」など、見どころは満載。今こそ多くのウルトラマンのファンに手にとってもらいたい作品である。