1972年から『週刊マーガレット』(現:『マーガレット』 集英社)で連載が始まった池田理代子氏の『ベルサイユのばら』。作品が発表されてから50年以上の時を経て、今年劇場アニメで帰ってくる。先日、追加キャストも発表され、原作でおなじみのキャラクターがどのように描かれるのかと思うと今から待ち遠しい。
ところで『ベルサイユのばら』といえば、オスカルとアンドレをはじめとした男女の情熱的な恋愛も見どころだ。そこには現代人には絶対に口にできないような、数多くの燃える愛の囁きが登場する。今回は『ベルばら』に登場するメンズキャラの激しい愛の囁きを、一気に紹介したい。
■「あなたの忠実な騎士にどうぞお手を…」フェルゼン
貴族のハンス・アクセル・フォン・フェルゼンは、王妃マリー・アントワネットと運命的な恋に落ちた男性であり、オスカルの親友でもある。彼はオペラ座の仮面舞踏会で出会ったアントワネットと激しい恋に身を投じた。
フェルゼンのアントワネットに対する愛の囁きはこうだ。まずアメリカ独立戦争から帰って来たときに「この命も心も すべて燃えつくすまで アントワネットさまにおささげいたします」と、彼女を生涯支えていく誓いを述べている。
また物語終盤、アントワネットが窮地に陥った際にはベルサイユに戻り「ともに死ぬためにもどってまいりました… あなたの忠実な騎士に どうぞお手を…」と手を差し出すのであった。
こんな情熱的なセリフを言われたら、誰でも心を奪われてしまいそうだ。フェルゼンの愛の囁きは情熱的でありながら、同時に王妃・アントワネットを深く敬う気持ちも込められている。
■「すきに……なってもいいか……?」ベルナール
現代でも通用しそうなストレートな表現でロザリーに迫ったのが、ベルナール・シャトレである。彼は当初貴族に対し恨みを持っており、“黒い騎士”として貴族から盗みを働いていた。しかしオスカルによって捕えられ、自分を看病してくれるロザリーと距離を縮めていく。
ロザリーは自分の母親に雰囲気が似ていることもあり、ベルナールが恋に落ちるのはあっという間だった。そして彼女もまた貴族に育ての母親を殺された過去があり、2人はその痛みを共有した。
ベルナールは看病してくれるロザリーの手を引き寄せ「すきに……なってもいいか……?」と囁く。その後、口づけをかわす2人……。
かつてはオスカルに恋をしたロザリー。いつしか大人の女性となった彼女が共に生きたいと思えるほどに愛せる男性に出会い、恋に落ちるこのシーンには感慨深いものがあった。悲劇的な恋愛が多い本作において、この二人の幸せを願った読者は多いだろう。
■「あなたが女としての幸福をもとめるのを どうして非難することができるだろうか……」ルイ16世
国王・ルイ16世は、夫として妻であるアントワネットを純粋に愛していた。しかし彼女の心はフェルゼンに向いており、そのことを知りつつもルイ16世はその事実を受け入れていた。
その葛藤を抱えた彼の気持ちはあまりにも切ない。まばゆいほどに美しいアントワネットの姿を見て、“自分は美男子ではないし、太っているし、ダンスも下手だし、気も弱く喜ばせるような会話もできない”と自己評価をし、だけど、“でも愛しているのだよ”と、思いを馳せている。
そしてフェルゼンを好きなアントワネットに対し「あなたが女としての幸福をもとめるのを どうして非難することができるだろうか………」と、涙するのであった。
ちなみにアントワネットはフェルゼンへの想いがあったものの、ルイ16世との関係も決して悪いものではなかった。優しく寛容な彼をアントワネットは尊敬しており、夫婦としての絆は最期の時までしっかりと残っていたように思う。