■てんとう虫コミックスへの収録は見送りに
ヒロインが突然消えてしまう場面や、「神隠し」という現象そのものも恐ろしいが、なによりシュールな四次元世界と四次元人の存在。そして四次元から帰れなくなる展開となすすべなく記憶を失ってしまうオチが恐ろしいトラウマエピソードだった。ふだんの『キテレツ大百科』とのギャップが、恐怖に拍車をかけた部分もあるだろう。
元になった原作の「冥府刀」は、シュールかつ静かな雰囲気がさらに恐ろしいエピソードになっていた。ふだんは描かれない人物の影が描かれていたり、「冥府」を「死んだ人の国」と明言していたりするのも不気味で、当初発売されていた「てんとう虫コミックス」には収録が見送られた。なお、のちに刊行された「藤子不二雄ランド」や「藤子・F・不二雄大全集」には収録されている。
ほかにも、アニメでは好人物と描かれがちだったブタゴリラがいじめた少年が、キテレツの発明品で恨みを晴らそうとするも怨念が暴走してしまう「うらみキャンデー」(少年が藁人形にクギを打つシーンまである)のような恐怖エピソードもあった。ほのぼのとした『キテレツ大百科』だが、実は怖い部分もあるアニメなのだ。