■汚れ役から愛されキャラに…『仮面ライダービルド』氷室幻徳/仮面ライダーローグ

 最後は、平成仮面ライダーシリーズ第19作『仮面ライダービルド』の氷室幻徳を紹介する。彼も闇の存在から光となり、物語を大きく動かしたキャラクターだ。

 東都政府の要職と、東都先端物質学研究所所長を務める幻徳。しかしその正体はナイトローグとして暗躍するファウスト幹部であった。

 しかしその一方、彼もまたパンドラボックスの光により操られた被害者という側面もあり、純粋な悪とは言い切れない複雑な存在だった。そんな幻徳は、桐生戦兎/仮面ライダービルドとの戦いに敗れたあと、一度物語から退場する。

 そして幻徳は、西都のライダー・仮面ライダーローグとして再登場を果たす。圧倒的な力で再び戦兎たちの前に立ちはだかるが、この時すでにパンドラボックスの光からは解放されており、日本を再び一つにまとめ上げるため、あえて汚れ役を自ら演じていた。

 その後、戦兎たちと共闘することを選び、正義の仮面ライダーとして戦った玄徳。仲間からは「ゲンさん」という愛称で呼ばれ、その壊滅的なファッションセンスも相まって、視聴者からも愛される存在となった。

 エボルトとの壮絶な最終決戦では「後は頼んだぞ…桐生…戦兎…!!」と未来を仲間に託し命を散らした玄徳。エンディングの新たな世界では、パンドラボックスがなければこれが本来の彼なのだろう……父を支える秘書として誠実に生きる幻徳の姿があった。

 

 今回は『仮面ライダー』シリーズ、敵から仲間へと「光落ち」した仮面ライダーたちを紹介してきた。

 それぞれ個性的な悪役として登場するも、主人公ライダーとの激しい対立を経て、正義のライダーとして再び立ち上がった彼ら。

 「光落ち」の展開は本シリーズを代表するような胸アツ展開で、彼らが過去の罪や宿命と向き合い葛藤の末に正義へと転じる姿は、我々視聴者の心に今も残っている。

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