『仮面ライダー』シリーズでは、敵キャラが正義に目覚めるという「闇落ち」とは逆の「光落ち」の展開が定番だ。かつて死闘を繰り広げた敵が頼れる味方となり、主人公たちと共闘する姿は、シリーズファンならずとも心を揺さぶられる展開ではないだろうか。
この記事では、そんな「光落ち」を遂げた者の中から、とくに印象深かったライダーを振り返ってみたい。
■記憶を消された戦士…『仮面ライダードライブ』チェイス/仮面ライダーチェイサー
平成仮面ライダーシリーズ第16作『仮面ライダードライブ』に登場するチェイスは、正義と悪のはざまで揺れる孤高のキャラクターで、その存在感はシリーズのなかでも際立っている。
チェイスは幹部の意向にそぐわないロイミュードを処刑する「死神」、さらにはロイミュードを敵から守る「番人」として登場。魔進チェイサーに変身し、主人公・泊進ノ介/仮面ライダードライブと幾度となく戦った。
だが、彼の正体は、グローバルフリーズの夜に人類を救った、本作における“最初の仮面ライダー”プロトドライブであった。敵によって記憶を消され、ロイミュードの戦士として操られていたのだ。
その後、ドライブとの戦いや、ヒロイン・詩島霧子との交流を経て記憶を取り戻したチェイスは、自らの意志で進ノ介たちと共闘することを決意し、「仮面ライダーチェイサー」として再び正義の戦士として立ち上がる。
その姿は、守るべきもののために戦う王道展開であり、多くの視聴者を感動させたことだろう。とくに、ゴルドドライブとの最終決戦で見せた詩島剛/仮面ライダーマッハとの友情シーンは熱い名場面として語り継がれている。
■願望から生まれた存在…『仮面ライダーエグゼイド』パラド/仮面ライダーパラドクス
平成仮面ライダーシリーズ第18作『仮面ライダーエグゼイド』に登場するパラドも、光落ちしたキャラの代表だろう。
本作の怪人バグスターの参謀として登場したパラドは、究極のゲーム『仮面ライダークロニクル』の完成を目指し暗躍する。
命がけの戦いも無邪気に楽しむパラドは、中盤からは自らも仮面ライダーパラドクスに変身し、主人公・宝生永夢/仮面ライダーエグゼイドの前に立ちはだかり続けた。そしてやがて彼が、永夢の“ゲームの遊び相手が欲しい”という願望から生まれたバグスターであるという衝撃の事実が判明することとなる。
物語中盤ではムテキゲーマーとなった永夢に、一度は消滅させられたパラド。復活を果たすも自らも“命を失う恐怖”を経験したことで生命の重みを痛感し、これまでのおこないを懺悔する。
そんなパラドを永夢も受け入れ、2人は協力して敵と戦うことを決意。その後、それまで手も足も出なかったクロノスを圧倒する展開は痛快だった。クロノス撃破後、2人が交わしたグータッチは本作屈指の名シーンだと言えるだろう。
さらに最終戦では、パラドは自身の命を引き換えに決死の特攻をかける。多くの人を苦しめ消し去り、その贖罪に苦しんだパラドだったが、最後は正義のライダーとして自身の命と引き換えに多くの命を救ってみせたのだった。
ちなみに、後日談としてパラドは再び実体化を果たしハッピーエンドとなっている。