■永久追放され一生孤独で生きる「震動駅」

 アニメ化はされていないが、原作漫画には「震動駅」というエピソードが登場する。

 本エピソードでは、999号のウェイトレスにメタルメナという女性が登場する。停車した震動惑星のホテルで鉄郎は彼女と同じ部屋に泊まることになるのだが、いびきがうるさく眠れないため、車内に戻ろうとする。しかしその途中、何者かによって気絶させられ、気づくと震動惑星の地表にいた。

 そこに現れたのは首のない機械化人、首なしのレジストだった。この星では、静かな時に外に出ることは戒厳令違反とされ、地表に永久追放されてしまうという。その結果、レジストは地表で198年もの間、孤独に生きてきたのだった。

 だがその時、地下から1本のロープが上がってきた。レジストによると、この星の重力は地球の2分の1のため、地球人はロープで脱出できるという。(ちなみにこのロープは、メタルメナが投げたものだった)

 しかし、鉄郎は脱出できてもレジストは永遠にそこから出ることはできない。「いつか助けにくるよ」と言う鉄郎だったが、レジストは「そんな約束はやたらにするもんじゃないよ!! いわれたほうは本気にして…あとでがっかりするからね!!」と憤る。しかし「でも…ありがとう…」と、鉄郎に感謝するのだった。

 結果、ロープで無事に生還し、999号に戻れた鉄郎。しかし「わすれちゃいけない人が 上に閉じこめられてるんだ…… 死なない体の人って……限りある命の人間よりつらいことがあるんだね」と、落ち込む。

 本エピソードでは、果たせない約束を軽々しく口にしてはいけないことが分かる。これからも震動惑星の地表でたった1人で生き続けるレジストのことを思うと、その孤独はあまりにもつらく切ないものがある。

 

 死ぬことのできない機械化人たちだからこそ、永久にその場で生き続けるという耐えがたいつらさが浮き彫りになる。何千年ものあいだ修行を続ける者や、独りぼっちで地表に留まる者……もしも“自分だったら?”と思うと恐ろしい。

 私たちは普段から死ぬことを恐れてはいるものの、今回のエピソードを振り返ると死ねることはある意味幸せなのだと気づかされる。終わりがあるからこそ、人生には意味があり楽しいのだろう。

  1. 1
  2. 2
  3. 3