■「どこにいるんだよ角刈り!!」もはや別人!「今日は私のバースディの巻」
『こち亀』には両さんの誕生日を題材にした回がいくつかあるが、そのなかでも中川が両さんの誕生日会をプロデュースした「今日は私のバースディの巻」は、読者に大きなインパクトを与えた回だ。
“もっと先輩を大切にしよう”と考えた中川は、ローリンクル・ストトンズ、ポール・マッカチンといった超一流ミュージシャンを招くスペシャル誕生日会を企画する。出演者への交渉を3年前から行い、観客のエキストラは5万人を用意するなど、桁違いのスケールはさすが世界一の大金持ちである。
事前に誕生日会の内容を聞いた両さんは大喜び。「先輩を大切にしよう」という中川の願いも叶えられた……かのように思えた。
誕生日の前日、なんと祝い事で大阪を訪れた両さんの足取りが急に途絶えてしまう。このまま両さんが帰ってこなければ誕生日パーティーは台なしだ。この緊急事態に、普段冷静な中川が慌てまくる。
「どこにいるんだよ!角刈り!!」「3年間の苦労がパァになるだろがァ」
そう叫んで椅子を蹴り飛ばす中川の取り乱しっぷりは、まさに「壊れた」という表現がふさわしい。あの中川が両さんを「角刈り」と呼ぶのも笑いを誘う。結局両さんは東京に戻らず、中川は身代わりを用意して「本人不在」の超豪華誕生日パーティーをやりきった。
ちなみに両さんが行方不明になった理由は、新幹線の乗り間違えであった。そんな理由で3年間の苦労と先輩への思いやりが台なしにされたのだから、中川がおかしくなるのも無理はない……。
いつもは両さんに常識を説いている中川が非常識すぎる行動をくり出すと、普段との落差が生まれる。その流れは漫才の“フリ”と“オチ”のように完成されており、だからこそ読者は笑ってしまうのだろう。
……と、ここまで見てきたが、よく考えたら中川は初登場した第1話で威勢よく拳銃を撃って通りがかりの車を破壊した問題児だった。意外でもなんでもなく、中川はもともと“壊れキャラ”の素質があったのかもしれない?