多くの人が幼い頃から親しんできたアニメ。ときに痛そうなシーンや、人が亡くなってしまうシーンなど、ショッキングな展開もある。「かわいそうに……」と冷静に受け入れられるのは、大人ならではの経験があるからだろう。
しかし子どもの頃に見たショッキングなシーンのなかには、忘れられなくなったものもある。今、見返してみるとたいしたことはないのだが、その当時は体が固まってしまうほど衝撃を受けたものだ。今回は、幼少期に見て怖かった昭和アニメのトラウマシーンを紹介したい。
■腕を引きちぎられポトリと…!! 『サイボーグ009』
まずは、筆者が子どもの頃にトラウマになったシーンを紹介したい。それは1979年に放送されたアニメ、石ノ森章太郎さんの『サイボーグ009』である。本作は悪の組織「ブラックゴースト」によってサイボーグ兵士に改造された9人の男女が、平和のために戦うストーリーだ。
筆者がもっとも怖かったトラウマシーンは、テレビシリーズ48話『四つ子の謎(後編)』だ。この回では、謎の聖人・ガンダールが登場する。
サイボーグ戦士たちは、敵である三つ子サイボーグとの関係に注目し、実はガンダールが四つ子の一人ではないかと仮説を立てる。しかしガンダールは四つ子ではなく、彼こそネオ・ブラックゴーストを倒す鍵だったのだ。
この回では、巨大な石像のような敵が009たちに襲いかかり、メンバーの一人である002ことジェット・リンクが捕らえられてしまう。石像に体を拘束され、身動きが取れないジェット。すると石像は、ジェットの片腕を引きちぎってしまうのだ。ジェットの苦痛に満ちた絶叫が響き渡り、引きちぎられた腕は無残に地面へ落ちる。この描写にショックを受けた幼い頃の筆者は、怖くて動けなくなったことを覚えている。
現代ではここまで過激な表現は少ないかもしれないが、当時はそうではなかった。サイボーグであるはずのジェットが痛みや絶望を感じる姿は、彼らがかつて人間であったことを強く想起させ、とにかくつらかった。
■超肥大化した人間の迫力…!!『銀河鉄道999』
昭和を代表するアニメ、松本零士さんの『銀河鉄道999』は、主人公・星野鉄郎と謎の美女・メーテルが銀河鉄道999号に乗ってさまざまな星を訪れて冒険をする物語だ。そんな本作にも、トラウマになるようなシーンが登場する。それは「なまけものの鏡」というエピソードでの場面だ。
銀河鉄道999号は、地球が繁栄していた頃の面影がある「なまけものの星」に到着する。そこはすべて機械化された快適な星だが、肝心の人の姿がない。
そこで鉄郎が一軒の家を訪ねたところ、家が破壊されるほど体が肥大化した人間がいたのである。この星はすべてを機械に任せた結果、人々が動かなくなり、肥満で体が山のように膨れ上がった人々が暮らす星だったのだ。
大人になった今、肥大化した人のシーンを見返すと、まるで肉だんごのような体でちょっとコミカルにも思える。しかし子どもの頃は働かない人間の行く末を見せられたようで、リアルに恐ろしかった。
ちなみにアニメでは、原作漫画にはないサボリナというふくよかな女性が登場する。彼女はこの星の暮らしが嫌になり、鉄郎との出会いにより自分で銀河鉄道のパスを手に入れようと決意する。
また鉄郎もこの星との出会いにより、機械の身体になっても絶対に怠けないことを誓うのであった。衝撃的な肥満人間が出るこの回では、人間がどう生きるべきかの教訓もたっぷり含まれている。