『マルサの女』『子猫物語』に『スウィートホーム』も「ファミコン化」…80年代日本映画はファミコンでどうゲーム化されたのかの画像
ファミコン『スウィートホーム』(編集部撮影)
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 1983年、任天堂より発売されたファミコンこと『ファミリーコンピュータ』。40年以上が過ぎた令和の今もなお愛されているゲームハードだ。

 ファミコンは数々の名作ゲームを世に送り出してきた。シューティングやRPGなど多彩なジャンルが展開されるなか、有名な漫画やアニメ作品をベースにしたゲームも多く登場しており、原作のファンを大いに盛り上がらせた。

 しかし、なにもゲーム原作に使用されるのは漫画やアニメだけではない。なかにはファミコンが発売された80年代公開の「日本映画」を原作として取り入れた意外な作品もある。

 今回は、邦画の世界観を巧みに取り入れたファミコン作品を振り返っていこう。

■調査と正しい選択で脱税者を追い詰めろ…『マルサの女』

 1987年に公開された映画『マルサの女』は、国税局査察部、通称マルサに異動となった主人公・板倉亮子が、女性査察官として脱税者たちと戦いを繰り広げていく作品だ。

 脱税者を追い詰めるという一見地味にすら思えるテーマを、コミカルかつ痛快に描いたエンターテインメント作品で、第11回日本アカデミー賞も受賞した文句なしの傑作である。

 そんな本作だが、1989年には同タイトルのファミコンゲームが発売されている。カプコンから発売されたゲーム版『マルサの女』は、映画版の監督を務めた伊丹十三さんが監修を務めたことでも有名で、いくつか細かい設定変更こそあるものの、原作の映画版同様のストーリーをなぞる形でゲームが進行していく。

 ジャンルはコマンド選択式のアドベンチャーゲームとなっており、プレイヤーは主人公の亮子を操作しながら、さまざまな場所を調べ、適切なコマンドを選ぶことで脱税者たちを追い詰めていく。

 アドベンチャーと聞くと難しい印象を抱く人も少なくないだろう。だが本作ではゲーム側がある程度必要なコマンドを絞り込んでくれるだけでなく、基本的には必要な行動をすべて選ばないと別箇所に移動できないという、親切なゲーム設計となっているのも良かった。

 リアルタッチな登場人物や捜査現場の背景はどれも緻密なドット絵で描かれており、原作の世界観を見事に再現しているのも実にポイントの高い点だろう。

 ひとたびコントローラーを握れば、“マルサの女”として映画の世界観に引き込まれてしまうこと間違いなしだ。

■ムツゴロウさんらしい動物満載の世界観にほっこり…『子猫物語』

 動物研究家のみならず、小説家、エッセイスト、はてはプロ雀士といったさまざまな分野で活躍した畑正憲さん。「ムツゴロウさん」の愛称でおなじみの彼だが、実は監督・脚本を手掛けた映画作品がある。それが、1986年に公開された『子猫物語』だ。

 本作は茶虎の牡猫・チャトランを主人公とした冒険映画で、パグ犬のプー助や熊、狐、アライグマといった数々の動物たちが登場し、物語を彩っていく。大ヒットを記録した本作は、日本だけでなく、世界でも高い評価を受けた。

 そんな本作は映画公開の同年、ポニーキャニオンよりファミコンのディスクシステムでゲーム作品として登場。

 ゲーム版は原作の世界観を踏襲した横スクロールアクションとなっており、プレイヤーは主人公の子猫・チャトランを操作し、理想の恋人・シロ子を目指して進んでいくこととなる。

 操作自体は移動とジャンプが主体となるオーソドックスなものだが、所持している「卵」を下に落として相手を攻撃したり、特殊な卵を揃えることで友達のプー助が助けに来てくれたりと、オリジナル要素も満載だ。

 ほのぼのした空気のゲームではあるものの、敵に触れてしまうと即ワンミスとなってしまうため、意外にも作品の難易度は高め。

 ゲーム内の原作再現もさることながら、説明書には原作映画のワンシーン画像が使われていたりと、まさにチャトランの大冒険を追体験できる一作となっていた。

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