■聖地巡礼も楽しめる全国のマンホール
前述した『るろ剣』だけでなく、作者ゆかりの地であることや、作中の舞台になっていることからマンホールが設置される例は多い。たとえば、東京都では港区に『美少女戦士セーラームーン』のマンホールが5種類設置されているが、これは作品の舞台が麻布十番周辺であることから。作品の中では、当時実際に存在していた街並みや建物が描かれることもあった。
そして、葛飾区亀有地域には、秋本治さんの漫画『こちら葛飾区亀有公園前派出所』の両津勘吉をはじめとする6種類のマンホールがある。言わずもがな、亀有が舞台の作品であるためだ。
東久留米市には手塚治虫さんの『ブラック・ジャック』のマンホールが6種類設置されている。これは手塚さんが、1980年から亡くなるまでの約10年を東久留米市で過ごした縁から実現したもので、この土地で生み出した作品ということで『ブラック・ジャック』が選ばれたようだ。
府中市には末次由紀さんの漫画『ちはやふる』のマンホールがある。主人公の綾瀬千早と幼馴染の真島太一は府中市に住んでいる設定で、作中では府中の景色も描かれる。設置場所の一つである片町文化センターは、千早たちがチーム戦をした場所のモデルとなっているため、聖地巡礼を楽しむファンも多いのではないだろうか。
もちろんデザインマンホールは東京だけにとどまらない。福岡・北九州市では2018年、北九州市下水道100周年を記念して、北九州市ゆかりの漫画家である松本零士さんの『銀河鉄道999』デザインのマンホールが9種類設置された。
作者のさくらももこさんの出身地である静岡市清水区(旧:清水市)には、『ちびまる子ちゃん』のデザインマンホールがある。そのうちの2枚は、2018年にさくら氏が自らデザインし描き起こして静岡市に寄贈したものだという。現在、下水道事業100周年を記念して製作された9枚の『ちびまる子ちゃん』マンホールも新たに設置されたが、作者の地元愛がつまったマンホールには心も暖かくなる。
一風変わっているのが、埼玉・所沢市の28個のイルミネーションマンホール(LEDマンホール)。これは史上初のLEDで自発光するマンホールで、『機動戦士ガンダム THE ORIGIN』や『新世紀エヴァンゲリオン』など、KADOKAWAに縁の深いタイトルが並ぶ。東所沢駅から、KADOKAWAが建設する複合施設「ところざわサクラタウン」に向かう道中に誘うように設置されており、夜間の防犯効果や下水道事業のイメージアップも意図しているという。
どんどん増え続けるデザインマンホールには、その地方にわざわざ訪れたい魅力がある。年末年始の帰省やお出かけの際にはぜひ足元を気にして歩いてみたいものだ。