■オリジナルゲームに光るタイトルも……
では、PC-FX用のオリジナルタイトルに面白いソフトはなかったのかといえば、そんなことはありません。たとえば、『ときめきメモリアル』の開発スタッフが手がけた恋愛RPG『ブルーブレイカー ~剣よりも微笑みを~』(NECホームエレクトロニクス)は、個人的にPC-FXで一番ハマったタイトルです。
主人公ケインが家訓により嫁探しをしながら、自らが復活させてしまった魔王を倒すというストーリーで、難易度は高かったのですが遊びごたえのある面白い作品でした。当時はPC-FX用ソフトのためか攻略本もなく、友人と一緒に完全攻略同人誌を作ったのも懐かしい思い出です。
また、自由な学園生活を送るRPG風恋愛格闘アドベンチャー『ファイアーウーマン纏組』(NECホームエレクトロニクス)もPC-FX発の傑作です。恋愛要素以上に学園を自由に動き回っての活動が楽しく、部活などで覚えた技をボタンに割り当ててのバトルが非常に楽しかったタイトルでした。
このほかにもSFRPG『虚空漂流ニルゲンツ』(NECホームエレクトロニクス)や、80年代アニメをフィーチャーしたシューティング『超神兵器ゼロイガー』(NECホームエレクトロニクス)、『天外魔境 電脳絡繰格闘伝』(ハドソン)など、コアなゲーム好きを魅了する個性的なタイトルがありました。
ただし、これらのPC-FX発の傑作・良作も、しばらくするとプレステやセガサターンに移植されてしまい、PC-FXだけの優位性が薄れてしまう展開が続いたのも残念な点でした。
■PCーFXはなぜ生き残れなかったのか
結局、初代プレステやセガサターンの勢いに太刀打ちできず、大きな差をつけられてしまったPC-FX。その要因はいくつかあると思いますが、発売時の49800円という価格はプレステ、セガサターンよりも高額だったのは衝撃でした。しかも、売れている両ハードはメーカーが自発的にどんどん値下げしていったのも、当時の状況を象徴しているかのようです。
それに、不利な状況をくつがえすほどのキラーソフトが生まれなかったのも事実です。幻となってしまったRPG『天外魔境III』が予定通りPC-FXで発売されていれば……とも思いますが、PC-FX自体の低迷が開発中止を招いたともいわれており、たとえ発売されていたとしても手遅れだったのかもしれません。
結局PC-FXで発売されたソフトは4年間で62本と、ほかの2ハードと比較しても圧倒的に少なく、サードパーティーの参入も数えるほどでした。
こうして発売から4年ほどで存在感を失ってしまったPC-FX。プレステとの次世代ゲーム機戦争に敗れたセガのハードほど熱狂的なファンが目立たないのは、購入者の母数を考えたらやむを得ないでしょう。少しずつ忘れられた存在になりつつあるのはユーザーとしては寂しい限りです。
しかし、PC-FXから生まれたタイトルにも傑作はあったし、90年代のゲーム業界を盛り上げた個性的なハードだったのは間違いありません。いまだ手放すことのできない筆者としては、記録にも記憶にも残していきたいゲーム機だと思っています。
個人的には、けっこうコアなユーザーの多かったPCエンジンのゲームも遊べる「後方互換性」があれば、買い替え需要も含めてワンチャンあったのでは……と思ったのですが、いかがでしょうか。