プレステ、サターンだけじゃない…ひっそり30周年を迎えた「PC-FX」は、なぜ次世代ゲーム機戦争に敗れたのかの画像
本体は少々黄ばんでも30年前の輝きは決して色褪せない! 画像は「PC-FX」(NECホームエレクトロニクス)本体 (著者撮影)
全ての写真を見る

 1994年・冬、スーパーファミコンメガドライブといった家庭用ゲーム機の次の覇権を狙うべく、次世代機として初代プレイステーションセガサターンが登場。2024年で30周年を迎えました。

 このときは「次世代ゲーム機戦争」と呼ばれる、し烈なシェア争いが繰り広げられた時代。ゲーム業界が大きく盛り上がったことを記憶している人は多いと思います。

 しかし、初代プレステやセガサターンとほぼ同時期に発売され、同じく今年で30周年を迎えるもう1台の次世代ゲームハードの存在を覚えている人はどのくらいいるでしょうか。

 そう、PCエンジンの後継機としてNECホームエレクトロニクスが発売した「PC-FX」です。

■白いボディが眩しいPC-FX 動画再生に特化したゲーム機……だったけど!?

 セガサターンや初代プレステが発売されたばかりの1994年12月23日に発売となったPC-FX。当時のNECのパソコンに似た、白一色のミニタワーPCのような形状をしていました。

 PCエンジンは他のハードよりいち早くCD-ROMを活用し、声優のボイスやアニメシーンをゲームに取り入れて人気を博しました。PC-FXはその流れを継承し、動画再生機能を用いた「アニメ戦略」を展開。ハードの発売と同時に『バトルヒート』『TEAM INNOCENT』(いずれもハドソン)といったアニメーションの再生能力をアピールするタイトルが発売されました。

 その後もアニメシーンをふんだんに盛り込んだ『キューティーハニーFX』(NECホームエレクトロニクス)や、スーパーファミコン版にキャラクターボイスを追加した『アンジェリークSpecial』(NECホームエレクトロニクス)、アニメの紹介や声優バラエティを収録したディスクマガジン『アニメフリークFX』シリーズ(NECホームエレクトロニクス)などが発売されます。

 しかし残念なことにこの方向性は、ハードをブレイクさせることにはつながりませんでした。アニメーションをはじめとする動画再生は、プレステやセガサターンでも実現可能だったのです。

 プレステとセガサターンは3Dグラフィックに強いうえ、PCーFXの売りだった動画再生能力まで備えていたことから、率直にハードの性能面で太刀打ちするのが厳しい状況だったといわざるをえません。

■ついに禁断のソフトを解禁するも……ライバルが多すぎた!?

 動画再生機能によるアドバンテージが得られない事態になったPC-FXですが、もうひとつ大きな武器がありました。それは18歳未満禁止、もしくは18歳以上推奨の、いわゆる大人向けの移植ゲームです。セクシーかつ可愛いヒロインたちが登場するゲームは、PCエンジンの時代から受け継がれた、ある種“伝統”でもありました。

『同級生2』『Piaキャロットへようこそ!!』(いずれもNECアベニュー)など、パソコンで大ヒットしたタイトルが、PC-FXの売りであるボイスつきで移植されるとなれば見逃せませんでした。

 これらのタイトルに強烈なインパクトがあったのは事実ですが、さすがにゲームハードをけん引するほどの力はなかったようです。そもそも移植されたタイトル自体それほど多くなかったこと、そしてセガサターンにも大人向けゲームが移植されていたのも痛手でした。ハードの販売台数が上のセガサターンにお株を奪われたとあっては、太刀打ちするのは難しかったはずです。

 それに当時のWindowsパソコンのほうでも、ボイスつきのゲームが主流になりつつある時期に重なってしまったこともPC-FXにとって不運だったといえるかもしれません。

  1. 1
  2. 2
  3. 3