■20年の歴史で初めて聞く声!『できるかな』ノッポさんの挨拶
『できるかな』は、1970年4月8日から1990年3月6日に渡り、20年間放送されてきた造形教育番組である。主人公のノッポさん(高見映さん)が身近な素材を使っていろいろな玩具を作り、人形のゴン太くんと一緒に遊ぶという内容だ。
ノッポさんやゴン太くんは番組内では一言も喋らず、解説や進行はすべてナレーション(初代:つかせのりこさん 2代目:大和田りつ子さん)だけでおこなわれていたのも特徴的だった。
しかし『できるかな』の最終回、ついにノッポさんが声を出す。1990年3月6日放送の最終回終盤シーンで「あーあ、しゃべっちゃった。今日は特別なんです。長い間ね、みんなと友達でいましたけど、『できるかな』は、4月から『ともだちいっぱい』という新しい番組と替わります」と、挨拶をしたのだ。
それまで20年間、一度も声を発することのなかったノッポさん。その声を聞いたとき、当時視聴していた子どもたちよりも、幼い頃からノッポさんに慣れ親しんできた親世代のほうが衝撃を受けたかもしれない。
のちに最終回に話した理由についてノッポさん本人は「最後はどうしてもしゃべりたかった。こんないい声の持ち主だって知ってもらいたいっていうのもあった」と、茶目っ気たっぷりに語っていた。
ノッポさんこと高見映さんは作家としても活躍しており、著書には「ノッポさんがしゃべった日」という自伝書籍もある。
NHKの教育番組は、図工や実験、料理、歌などをテーマに進行することが多い。進行するにつれ思いがけないハプニングも起き、きっと撮り直しをしたケースもあるだろう。しかし今回のようにハプニングをそのまま放送してくれるのは貴重なケースと言える。
子どもたちにいろいろな教養を与えてくれるEテレ番組の数々。今後も子どもたちとともに番組を楽しみながら、ときおり起きる小さなハプニングにも期待したいところである。