『ファミリーコンピュータ』発売から7年後の1990年に登場したのが『スーパーファミコン』だ。大幅にグラフィックが進化し、その映像美には感動を覚えたものだ。
スーファミソフトが定着したころには、オープニングとエンディングがしっかりと作り込まれた作品も多くあったが、とくにオープニングの美しさは圧巻だった。スタートボタンでスキップするのを思わずためらった経験があるのは、筆者だけではないだろう。
そこで今回は、個人的に感動したスーファミソフトのオープニングを紹介していこう。
■まさか主題歌とCVが!? 驚愕のオープニングだった『テイルズ オブ ファンタジア』
1995年12月にナムコ(現:バンダイナムコエンターテインメント)から発売されたのが『テイルズ オブ ファンタジア』だ。本作は、のちにシリーズ化された名作RPGの記念すべき第1作である。
オープニングは、エドワード・D・モリスン(CV:井上和彦さん)が「この世に悪があるとすれば それは人の心だ。」と、語るところから始まる。真っ黒な背景に白の文字が紡がれていくこのシーンはちょっとダークな雰囲気で、どんなゲームが始まるんだろうとワクワクしたものだ。
だがここから一転、ドラムのビートが刻まれ、軽快なアップテンポのテーマソング「夢は終わらない 〜こぼれ落ちる時の雫〜」(歌唱:吉田由香里さん)が流れてくる。声優キャストのクレジットの合間にキャラ紹介とゲームの一部分を見せており、オープニングから目が離せなくなってしまう演出が次から次へと登場した。
また、キャラクターデザインは『逮捕しちゃうぞ』や『ああっ女神さまっ』などの漫画を手がける藤島康介さんが担当している。華麗で可愛らしいポップなキャラクターの数々にも見入ってしまった。
『テイルズ オブ ファンタジア』が発売されたこの時期は、すでに次世代機といわれた『セガサターン』や『プレイステーション』が登場していたころ。そんななか、ロムカセットだったスーファミにおいて、キャラクターボイス(CV)と主題歌がオープニングに挿入されているから驚いた。この発想をスーファミで実現させる技術が、また素晴らしいと言えるだろう。
だが、本作の発売1カ月前には『ロマンシング サ・ガ3』、そして1週間前には『ドラゴンクエストVI 幻の大地』と、大ヒットRPGが続々と発売。強力なライバル作品たちのせいか、当時、所有している友人はほとんどいなかったように思う。あの当時のソフトは値段がかなり高かったため、そう何本も同時期に購入しづらかったことも要因だったかもしれない。
筆者は発売から半年ほど経ってから購入したのだが、このような美しいオープニングに加えて内容も面白かったので、買って得をしたソフトといえたものだ。
■これから何が起こるのか…美しいBGMもマッチしていた『ファイナルファンタジーVI』
1994年4月にスクウェア(現:スクウェア・エニックス)から発売されたのが『ファイナルファンタジーVI』だ。
前作を上回る華麗なグラフィックや緊張感のあるバトル、個性豊かな多くの主人公たち、魔法や機械など、ファンタジーと文明がマッチした世界観も素晴らしかった。この果てしなくも美しい世界観に、当時のプレイヤーは虜になったものである。
本作のオープニングでは魔導アーマーに乗った2人の帝国兵と、主人公の一人であるティナが登場。強風が吹き荒れる崖の上から「あの都市か?」「魔大戦で氷づけになった1000年前の幻獣か……」と語る帝国兵。
説明書や攻略本、ゲーム雑誌などをいっさい読まずに本作をスタートした筆者。“1000年前の幻獣”という言葉や、そのストーリー設定に思わず胸が高鳴った。
そして振り返った兵士はティナに「生まれながらに魔導の力を持つ娘か…魔導アーマーに乗った兵士50人をたった3分で倒したとか…恐ろしい…」と言う。するともう1人の兵士が「大丈夫。頭のかざりの力で思考は止まっているはずだ。俺達の命令で思い通りに動く」と続けるのだ。
パッケージの裏箱にはティナが描かれているので主役であるとは思っていたが、このやり取りだけを見ると、“この緑色の髪の毛をした女の子(ティナ(名前はまだ知らない))は味方じゃないの?”と疑問に思った記憶がある。吹き荒れる強風の音も相まって、何か不穏なイメージを植え付けさせられた。
その後「東からまわり込む」と3人は崖から離れるのだが、ここからスローテンポのBGMが流れ始める。どこかクラシック音楽っぽい悲しくも切ないメロディーだ。雪原帯を進む魔導アーマー3体の姿をバックに、スタッフロールが流れていく。
降りしきる雪をものともせず、ただ歩を進める魔導アーマーの後ろ姿……。延々と続く雪原とBGMが非常にマッチしており、悲壮感もありながら美しさに感嘆した。派手な演出はなく、同じような雰囲気のままオープニングが流れていくだけなのだが、なかなかスタートボタンを押せないほど印象的だった。どれだけ本編が面白いのだろうと、期待でいっぱいになったものだ。