■閉所演出もイヤ~な野島伸司の『世にも奇妙』

 最後は1990年7月12日に放送された脚本家・野島伸司さんによる「死ぬほど好き」を振り返りたい。

 主人公の純平(角田英介さん)は、バレンタインデーに意中の人・美香(石田ひかりさん)から靴箱にチョコレートを贈られていたが、本当に間違いないのか不安に思っていた。そこで友人とともに、自分が事故死したことにして偽の葬式を挙げ、美香だけを呼び真意を知ろうとする。

 だが、葬式が始まるやいなや、死亡の噂は広まり、どんどん弔問客が増えてしまう。そんな中でも美香が棺に向かって告白しているのを聞き、自分を好きなことに間違いなかったと喜ぶ主人公。しかしついつい棺桶の中で眠ってしまい、棺桶は霊柩車で出棺されてしまう。脱出しようともがくものの車の急ブレーキでまたも気を失ってしまう純平。次に目を覚ましたのは今まさに火葬炉が点火されんとするときだった……。

 友人たちが到着したのは火が点された後。彼らは茫然と煙を見つめることしかできない。大掛かりな嘘で身を滅ぼしてしまうという話だが、実は純平の両親は工場の資金繰りに悩んでおり、息子の死によっておりた保険金で会社を建て直すことが出来るという、絶妙に後味まで悪くなるオチつきだ。両親がどこまでこの作戦を知った上で黙っていたのかと想像すると恐ろしい。

 狭い棺桶から抜け出せない恐怖を想像しながら、今まさに生きたまま点火されるというシーンを見ていると、自分まで閉じ込められている気分になってしまった。

 どの作品も絶対にはありえないという設定ながら、つい「もし本当だったら」と信じてしまうリアルな人間の心の動きがあった。「痛さ」と「怖さ」が伝わってくるものはいつまでも心に残るのだろう。

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